ピースな遺影

一人暮らしに戻って、1日も欠かしていないコトが
ひとつだけある。それは遺影の水替え。
毎日、遺影に供えるコップの水を替えて、遺影に向かって
ひと声かけるのが癖というか、日課になっている。
時には「おはよ。」だったり、時には
「ごめんごめん。忘れちょった。」だったり。

微笑みながらピースサインをする写真の主は、
自分の母方の祖母で、99歳でこの世を去るまで、
数々の逸話を残した。

自分達から「お婆(おばぁ)」と呼ばれる祖母。
ある時、風呂場に前屈みになって何かを吐いている。
見ると、風呂場の床が真っ赤に染まり、ただ事ではない状況。
「だ、大丈夫か?お婆!! どうした!?」
背後から駆け寄る自分。そこでお婆が一言。
「ス、スイカ、た、食べ過ぎたぁ…..。」
心配して損した。

呆けが少し出始めた晩年。
帰省した自分の為にコーヒーを入れてくれた時のコト。
なにやら台所で両手に白い粉の入ったふたつの瓶を持って、
小首をかしげているお婆の後ろ姿が見えた。
「どうした?お婆。」という自分に、
お婆は「砂糖はどっちぢゃお?」と、
そのふたつの瓶を見せるのだけれど、
片方は味の素で、もう片方はクレンザーだった。
「どっちも違うし。可愛い孫を殺す気か?」
という自分のツッコミに、
「死にゃすまい(死にはしないだろう)。」と、
悪びれた様子もなく笑うお婆。

他にもまだまだたくさんの逸話がある、
そんなピースサインのお婆に、今日も声を掛けて部屋を出る。
________________「ほな、行ってきます。」

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