伊平屋の土産話(水難事故寸前)

相変わらず伊平屋の海は真っ青で、喜び勇んで、
水中カメラ片手に岸からリーフの際を目指した。

途中、リーフ内に棲むたくさんの熱帯魚に見送られながら、
やっとこさリーフの際に到達。急に水深が15mほど深くなり、
水中の色はエメラルドグリーンから碧に変わる其処は、
自然の美しさと畏怖を同時に感じられる場所。

感嘆のため息を漏らしたその時、自分の体が
沖に向かって急激に流されている事に気づいた。
離岸流だ!! すぐにUターンをして必死で
フィン(足ヒレ)をかけどもかけども、まったく前に進まない。
こういう時は、岸に向かって真っ直ぐ泳いでも
体力が消耗するだけなので、岸に向かって斜めに
泳ぐと少しずつだけれど、岸の方に進んでゆける。
なんとか離岸流から離れ、立ち泳ぎをしながら
さっきまで自分の居た場所を振り返ると・・・。
「あっ・・・。」
今回シュノーケリング初体験のド素人である
FくんHちゃんの存在をすっかり忘れていたのだよ。

「Fくん! Hちゃん! 大丈夫かーっ!?」
「や、やばいです、ゴボゴボゴボ。」
2人とも沖に流されパニックになり溺れている。
このまま2人を見捨てて、もしも2人が死んだりしたら、
きっと後味が悪いし、なんせ、素人をリーフの際に
連れて行った自分にも責任があるしなぁ・・・。
どうせなら助けるだけ助けてみて、自分も一緒に
流されて死ぬ方がまだマシか_________。
溺れている2人の居る場所へ泳いで向かった。

2人の間に入り、2人の脇をそれぞれの手で掴んで、
顔が水面から出るように持ち上げる。
自分の顔はどっぷりと水の中なわけで、
それでも瞬間瞬間に顔を水面にあげて、
「絶対・・・ゴボゴボゴボ・・・帰れるから・・・ゴボゴボゴボ・・・、
 落ち着いて・・・ゴボゴボゴボ・・・、
 一生懸命・・・ゴボゴボゴボ・・・斜めに泳げ!! ゴボゴボゴボ。」
と、海水をたらふく飲みながらも2人を励ます。

数十分後。
ヘトヘトにくたびれて寝ころぶ
FくんとHちゃんの姿が砂浜にあった。
その姿を確認した後、再び海に入り、
水深3mほどの浅瀬で浮かびながら水中撮影を再開。
____おい人間。海を舐めちゃあイケないよ。
ファインダー越しにクマノミがせせら笑った気がした。