食欲に勝るモノ無し

どうしても食パンが食べたいのだけれど、
アイルバタン村のどの商店にも食パンが売ってなく、
この島で一番栄えている港町・テケッまで、
歩いて食パンを買いに行く事にした。
サンダル姿でアイルバタンの遊歩道を端から端まで歩き、
峠を越え、車が走れるくらいの道路に出ても、
またまたそこからひたすら歩く。遠い。本当に遠い。
こうして炎天下の中を1時間ほど歩き、途中昼食を摂る為に
立ち寄った食堂で、食パンを売っている商店の所在を聞き、
やっと食パンを手に入れる事が出来た。
食パン1袋1.5RM(約45円)とミックスジャム1瓶3.5RM(約105円)と
インスタントコーヒー等を買って、再び1時間かけて歩いて戻る。

帰り道、既に顔なじみになった村人たちに会う度、
「テケッまで歩いて食パン買いに行ってたよ。」と、
手に提げたビニール袋を見せると、誰もが
「よくやるわ。」と呆れ気味で笑う。
それでもボクは、食パンが食べられる嬉しさで幸せだった。
自分のバンガローに戻り、致命的なミス、
つまり、この部屋にトースターなどという有り難いモノは
無いと気づくまでは。

夕方、ミックスジャムを塗っただけの冷たい生の食パンを
口にくわえたまま、子供達の自転車修理を手伝う金曜日____。

ティオマン島 アイルバタンにて