モウカリマッカ?

毎朝9時に起き、ズボンの下に水着を履き、
ホテルのレストランで焼いて貰った食パン2枚とフルーツジュース、
それとコーヒーの朝食をとった後、
サンダルをズルズル鳴らしながら海岸沿いの通りへ出て、
顔見知りの店主やタクシードライバーたちと
「スラマッ パギ〜♪(おはよう)」と笑顔の挨拶を交わしながら
ノンさんのボート屋まで。

日本語で「おはようっ!」と左手を高くあげるボクに対し、
ボート屋のみんなも「オハヨウ!」と手を挙げて応えてくれる。
しかし、最近ボクが変な日本語を教えたせいで、
誰もが言うようになったのが「モウカリマッカー!?」。

最初の頃は、ボクも面白くて「ボチボチでんなー!!」と応えて
いたのだけれど、朝だけでなく顔を合わせるその度に、
「モウカリマッカー!?」「モウカリマッカー!?」と聞いてくるように
なってしまい、挙げ句の果てにボート屋のスタッフたちばかりか
島の子供達も大きな声で
「モウカリマッカー!?」「ボチボチィーデンナー!!」。

「あのね。これは大阪の商売人同士で交わされる挨拶だからね。」
と、一応意味も教えたのだけれど、彼らにとっては意味など関係ない
様子で、その言葉の響きと、標準語とは違う、ちょっとしたスラングを
覚えた嬉しさで、それはそれは何度も何度もオウムのように繰り返す。
「モウカリマッカー!?」「ボチボチィーデンナー!!」。
オマエらしつこい・・・。
「モウカリマッチャー!?」「ボッチボッチデンバー!!」
しかも勝手にアレンジしてるし・・・。
仕事そっちのけで、ヘンテコな日本語を連呼するスタッフや子供達の輪の少し外側で、
ボート屋の主人のノンさんが1人海をみつめながら、ボソッとつぶやく。
「モウカリマセン・・・。」