島のクリニック

とうとう旧正月(チャイニーズ・ニュー・イヤー)に突入。
普段静かな島にドッと観光客がやって来たこの日。

普段とは比べようのないほどの忙しさに朝から追われ続け、
うんざりした表情を浮かべるボート屋のスタッフたちと一緒に、
「早く夜にならんかな〜。」などと言いながら見上げていた太陽が
ようやく向かいの小島・マンタンゴ島の端に沈む夜7時半過ぎ。
船の掃除や道具の片付けを済ませたボート屋の主人ノンさんの
運転するバイクの後部座席にまたがり、左耳の診療の為、
島のクリニックに行く。

クリニックに到着。旧正月を祝う花火が打ちあげられ、
爆竹が鳴る外の喧噪とは正反対に、薄暗い蛍光灯の光が
隅まで届かないその待合室には、旧正月だというのに、
それぞれ付添人に付き添われた具合の悪そうな子供や
老人たちが診察の順番を待っている。
旧とはいえ、正月に病院来なきゃいけないそれぞれの事情を
持つ人達の中にボクも確実に入っているわけで、
なんだか凹んでしまう。

受付でノンさんに手伝ってもらいながらの手続きを済ませて
約1時間半後。ようやく自分の診察の番になり、ノンさんと
診療室へ。
初老のマレー人ドクターの診断は、ボクの予想通り「中耳炎」。
おまけに鼓膜も破れていて、そりゃ聞こえないはずだ。
診療後、45RM(約1,350円)の支払いを済ませ、薬を受け取り、
クリニックを出る。

誰かが放った打ち上げ花火の破裂音も、
距離感を失ったボクの左耳には、どこか虚しく聞こえる夜____。