一夜明けて

友人ボウイの忠告をよそにホテルを出て、左胸と腰の激痛に襲われながらも、こんな危険な大都会で痛そうな顔をしてびっこを曳いて歩こうものなら、それこそ犯罪者たちの格好のエサになってしまうと思い、半袖のTシャツの袖から覗いている腕の傷以外はいたって普通に振る舞おうと、普段通りに胸を張り、普段通りの姿勢とリズムで歩きながら、炎天下のもと、まずはチャイナタウンで偽時計を売る屋台に行き、すでに顔馴染みになっていたチンピラ風の店の主人から、半ば強引に借りたナイフをポケットに入れた後、そこから少し離れた事件現場に向かい、自分の血が残るその砂利道の脇や水たまりや側溝をくまなく探すも、昨夜無くした携帯電話はみつからず、ならばと、強盗団が潜伏している可能性の高い、仕事にあぶれたミャンマーやネパールからの出稼ぎ労働者たちが朝から晩までたむろするその区画まで行き、うごめく人混みの中から、昨夜暗がりの向こうに見た男達の顔を探したけれど、うる覚えの記憶ではみつかるはずもなく、仮にそいつらがみつかったところで、「この野郎! 携帯電話返しやがれ!」と喰ってかかる力など手負いのボクには到底無理だと解っているのに、それでもホテルの部屋でじっとしているよりかは、自分が納得出来る方へと動く、
それがボクのやり方なのだよ_____________。