さらばマレー

粗い縫い目を露わにした左腕。
姿勢を変える度に気が遠くなるほどの
痛みが走る右胸と尻。
そして破れたままの左耳の鼓膜。
旅の中盤に出来た手足の水疱跡もまだ生々しい。
これが日本に帰国する日のボクの体。
旅の最後のボクの体。正直ボロボロだ。

それでもボクは笑っている。
仲良くなったホテルのスタッフ達と。
街の安食堂の店員たちと。
2月半ばでも気温30度を越すこの町で、
ボクは今日も誰かと笑っている。

____「体が治ったらきっとまた来るよ。」
空港までボクを車で送ってくれたボウイ夫妻に、
財布の中にわずかに残っていたマレーシア紙幣を
すべてあげたボクは、二人にお礼と別れを言って、
イミグレーションへのエスカレーターを下った。
そこから機内の自分の席に座るまでの記憶は、
体中を駆け巡る痛みのせいで薄く白濁していて
今でも思い出せない。
そんなマレーシアの旅の終わり_______。

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