幼心を連れて

「ボク、イオンの方がえいのになぁ。」と
すっかり企業戦略にハマっている甥っ子・兄に、
「イオンの社長になるより、お城のお殿様の方が恰好えいでぇ。」と、
子供だましにもならぬ適当な事を言いながら、
彼の手をひいて高知城まで城壁横の階段を上った。

10分後、本丸の建つ丘の上に着く頃には
ボクの方がバテてしまい、ベンチで一服休憩。
タバコを燻らせながら、ボクは天守閣を指さして、
念のため甥っ子・兄に尋ねてみる。
「ところで・・・アソコまで上りたい?」
「うん!のぼりたいっ!」
そーですか・・・。じゃ上りましょ。
言い出しっぺはボクなわけやし。
馬鹿と煙と子供は高いトコロが大好きなのだ。

ということで、彼を片方の腕に抱え、本丸内の展示物には
一切目もくれず、ハシゴみたいな急な階段をダッシュで
上る事数階、天守閣に到着。甥っ子・兄を降ろす。
手すりから乗り出そうとする甥っ子・兄の上着の襟を
しっかり掴んだまま高知の景色を眺める。

天守閣の四方、東西南北どの高知の風景にもたくさんの
思い出があり、その少々色褪せた思い出たちが再生して
は冬の夕陽に溶けてゆく。初恋の子の微笑みが。
日が暮れるまで遊んだ悪友たちの笑顔が。
さきほどまで甥っ子・兄を抱えていた側の腕を、
力なくプランプランさせるボクの視線のその先で____。

甥っ子・兄「イオンどっちやろーねー。」
甥っ子・兄よ。
どんなにオマエがイオンっちゅーヤツに恋い焦がれても、
所詮相手はオマエの金目当てぢゃ。

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