頑張れ!下手クソな一塁手!

小学校4年生の2学期に転校してきた
隣町の野球チームの下手クソな一塁手のアイツ。

勝手にボクの家に上がりこんで、
ボクのお婆ぁの手料理を遠慮も無しに喰うアイツ。

アイツの実家が火事になった時に、
「なんでもえーから持ち出してくれ。」というアイツの頼みに応え、
唯一ボクが持ち出したペシャンコの学生カバンを見て、
ため息をつくアイツ。

高校生のくせして、パンチパーマに口髭ヤンキーなアイツ。

初めて組んだロックバンド、ボクの隣でベースを弾くアイツ。

同じオンナを好きになる度、いつも泣いていたアイツ。

東京で一緒に夢を追いかけ、そして一番最初に
高知に帰ったアイツ。

遅すぎるという周囲の声をも無視して、
板前の修業を積むアイツ。

フグの調理師免許を獲得したと喜ぶアイツ。

嫁さんと一緒に出した店のカウンターの中で、静かに笑うアイツ。

家を建て、店も拡げた矢先に肺ガンになったアイツ。

先日、帰省の折に見舞った病室。
「まーぼちぼち頑張れや。」という照れ隠しの混じったボクの言葉を、
ベッドの上で、これまた照れくさそうに受け止めるアイツの笑顔は、
やっぱり隣町の下手クソな一塁手_____________。