花の名前

そう言えば、離婚してからこちら、花というものを
マジマジと眺めた事がなかった。
昔、元嫁にひとつひとつ教えて貰っていた花の名前も、
ヤモメ暮らしのその隙間からポロポロとこぼれてゆき、
今ではすっかり忘れてしまっている。

花屋の片隅で、ムズムズする鼻を何度もこすりながら、
周りの花たちを眺めながら、今は「ひまわり」と「マーガレット」
ぐらいしか思い出せぬ自分を嘆いてみても、
宵の口に降り出した雨は止んでくれるわけでもなく、
逆に一層雨足を強め、店先の道路を激しく叩きつけている。

「お待ちどおさま。」と花屋に手渡された大きな花束を、
土砂降りの雨に濡らさぬよう、その花びらをこぼさぬように
大事に大事に抱えて、飲み仲間が出した本の出版記念
パーティーに向かう新宿2丁目仲通り_________。