2009沖縄・伊平屋島の土産話(事件なのだ!)

照りつける太陽の下で、島に1人だけいる駐在さんと二人、
いつものビーチで現場検証。

今朝、みんなでビーチに行くと、昨日ビーチから帰る時に
置いていったはずの、テントポールやロープはおろか、
ビーチチェア8脚の他、バーベキュー用具などを入れて
おいた段ボール箱まですべて無くなっていたのだ。

「ワタシ赴任して来て1年になるけど、こんな事初めてだなぁ。」と、
頭を掻く駐在さん。
いやいや、この島に来始めて18年のボクも初めてだっつーの。
「とりあえず、みんなが見かけたその漁師さんに、
 怪しい人物を見なかったか、話を聞きに行ってきますね。」
と、駐在さんは吹き出す汗をタオルで拭きながらビーチを後にした。

他のみんなは、各々ホテルで待機していたり、
失せ物を探し出す為に車で島を廻っている。
ただ1人を残して・・・。
ビーチの端の方に目をやると、はるか彼方の波打ち際で、
砂にはまって動かぬバギーにまたがったまま、体を前後に
揺らし続ける友人Fの姿が、小さく、ホント小さく見える。
朝、みんなでビーチに来て、消えた荷物に唖然とし、
全員で一旦ホテルに戻り、ホテルに駐在さんが来るのを待って、
その駐在さんを連れて再びこのビーチに戻って来た今の今まで、
回転数の上がらぬオンボロバギーで砂浜から上れるその場所を
友人Fは1人探し続け、結果あんな遠くに行ってしまい、
かすかに小っちゃく揺れている。さぞ暑かろうに。

♪胸に残る 白いペンダント
 日焼けしてない 其処だけ白いペンダント
 砂浜走る 白いバギー
 回転数の上がらぬ 錆びた白いバギー

 Oh! バギー! オマエの名を何度も呼ぶけれど
 海岸線のその片隅で砂にはまって動けぬバギー
 Oh! バギー Oh! バギー 哀しき日焼けのバギー♪

                   「日焼けのバギー」より

さて、次はアイツの救出の番や。あー面倒臭い。

4WDの軽トラックに縛り付けたロープで、えんやこらとバギーを
砂浜から上げている最中に携帯電話に連絡が入る。

「お巡りさんから連絡あったよ。荷物全部見つかったって。
 漁師さんが忘れ物だと思って預かっておいてくれてたらしいよ。」

見つかって良かった。やっぱりこの島に泥棒はいなかった。
本当に良かった。______このオンボロバギー以外は。

バギーを砂浜から上げた後、漁師さんの家に荷物を取りに行く。
ボクらを笑顔で出迎えてくれた漁師さんは70過ぎのご老人で、
奥さんと二人暮らし。礼を言うボクの視線を指で促すその先に、
ボクらのテント用具一式とビーチチェア8脚とバーベキュー用具を
入れた段ボール箱が丁寧にしまわれていた。
これらをこの老人1人で砂浜から運び出して持ち帰るのは、
さぞや大変だったろうと、その漁師さんに伺うと、
「上って下りて上って下りて、3回往復して難儀したさー。」と、
笑う白髪の老人。
ボクの隣に立っていた島の駐在さんが小さな声でボクに言う。
「小さな親切、大きな迷惑とはこの事さー。」
漁師さんの奥さんから頂いたスイカを頬ばりながら、
荷物を車の荷台に積み込み、漁師ご夫妻と駐在さんにもう一度礼を
言った後、ホテルに戻った。
駐在さんの言う通り、有り難迷惑だけれど、
なんだか嬉しい、そんな珍事件で始まった伊平屋最終日_____。