カマ不幸な日々

この日記のようなモノにも度々登場する新宿2丁目のマスター。
実は今年2度目となる癌手術の為に、10月から一時的に店を
閉めている。数年前、決して生存率が高くはない種の癌が
見つかり摘出手術をし、その後も再発や転移の度に、
手術や放射線治療や抗ガン剤治療といった癌との
イタチゴッコのような闘いもこれで4度目。

ここだけの話、来年2月には5度目を控え、
さながらボクシング世界チャンプの防衛戦のようだ。
事態は必ずしも楽観視出来ない事は当の本人だけでなく、
ボクら周囲の人間も重々承知なのだけれど、
ついついこちらがそんな軽口を叩いてしまえるのは、
彼自身が癌という病気と対峙しながらも、病気する前と
何ひとつ変わる事なく常に明るく前向きで、もし仮に自分が
同じ立場に立った時、はたしてこのように逆に周囲の人を
勇気づけられる人間でいられるかと考えさせられるほどの姿を
目の当たりにしてきたからこそ。

そりゃあ事情が事情だけに、時々は弱音のような台詞を吐くけれど、
すぐに背筋をピンと張り直すその姿に学ぶべき事数多く、
差し詰め、「還暦をとうに過ぎたオカマに見る人間美」といったところか。

「12月は久しぶりに顔を見せてくれる人も多いから、
 来週には店を開けるわよ。
 それに_____、
 ツカサがなんとかいっぱしになるまでは死ねないしねぇ。」

と、お姉ぇ口調でボクに妙なプレッシャーをかけてくるマスターの
その言葉に、だったらこのまま半端者で居続けてやろーか、
と少しだけ思ってしまう、
なんとも親不幸ならぬカマ不幸な受話器のこちら側______。