披露宴でした

島に戻って二日目の午後。
ボート屋のノンさんの奥さんの姪っ子の結婚披露宴に出席。
マレーシアでは披露宴を1度めは花嫁の家で2度目は花婿の家で
という風に、2度行われるらしく、今回はその1度目の披露宴。

披露宴が行われる村では前の日から準備で大忙し。
披露宴が行われる家の庭では、およそ3000人もの出席者に
振る舞われる料理や飲み物を大鍋で作る大人たち。
家の中では子供達が太鼓を叩きながら祝いの歌らしき歌を唄い、
宵の口から夜中までずっと続けられるその歌声と太鼓の響きは
周辺の村々まで聞こえていて、この島では昔からそうやって
周辺の住民に披露宴がある事を知らせているそうな。

_____________さて、話を披露宴当日に戻して。
披露宴に出席するのに短パンにTシャツでは失礼だろうと思い、
一応短パンからジーンズに服を着替え、一人バイクを運転し、
幾つもの峠を越え、昨夜ノンさんに初めて連れて行ってもらった
花嫁の家がある村になんとか迷う事無く到着。

今回もてなし側で大忙しのノンさんに会うやいなや、彼に連れられ、
まったく知らない人たちを次々に紹介されるけれど、
ただでさえ人の名前を忘れてしまうボクがその名前を覚えられる
はずもなく。ボクと10年近くつき合いのあるノンさんの奥さんの
名前すら思い出せないっちゅーのに。
ちなみに花婿は会場にまだ到着していないそうで、
それが普通らしく、この後しばらくしてから花婿が花嫁を迎えに
来るという、いわゆる対面の儀式みたいな事が行われるらしい。

一通り紹介を終えた後、空いている席に促され、ノンさんが運んで
きてくれた料理や飲み物を食べるのだけれど、何度もこっちを
チラ見する周囲の視線が気になる。そりゃあ島の人からすれば、
知った顔ばかりの披露宴の席に見知らぬ外人が居て、
手づかみで食べる地元民に混じり一人フォークとスプーン使って
飯喰ってるんだから珍しいのは解るけど、ずっと見られてると
食べにくいんじゃっちゅーの。

食事を終え、テントの隅で飲み物片手に一服していると、
道の向こうから昨夜聞いた太鼓の音と子供達の歌声が聞こえてきた。
花婿の到着らしい。綺麗にラッピングされた花嫁へのプレゼントの
数々を抱えた花婿側の家族親戚だろうか。その列の中心に花婿が居る。
それと同時に花嫁側の家からは、顔を扇で隠した花嫁が登場し、
双方の距離がいよいよ近くなってから、花嫁の顔の前の扇がどかされ、
めでたくご対面。そして花婿の日傘に入り二人並んでから記念撮影。
一通り記念撮影を終えた後、花嫁の家の中に進み、そこに設けられた
新郎・新婦席それぞれの席につき、そこで再び記念撮影。
室内は暑く、花嫁が汗をかかないように扇をあおぐ係の人までいる。

こうして記念撮影を終えた二人は再び家の外に設けられた
仮設テントの下の新郎新婦席に移動して、お祝いにかけつけた
人々らと共に食事をするのだけれど、二人が家の外に出た後、
何気に家の中を覗くと、先ほどの室内の新郎新婦席に
たぶん未婚であろう若い女性たちが交互に座り、
はしゃぎながら銘々が写真を撮っていた。

イスラムだろうが何処の国でも乙女心っちゅーのは変わらんな、と
その様子を見ていたボクに、
たまたまそこに居合わせたノンさんの奥さんが、
「ツカサ。新郎席に座って写真撮ってもいいわよ。」と言う。
「いやいや、オイラはブッディストやし、いかんでしょ?」
とボクが言うと、
「ツカサは家族同然なんだから、何の問題もないわよ。」
と優しい微笑みを浮かべて言ってくれる。
その微笑みに促され新郎席についたボクは、
独りでの写真撮影は寂しかろうと思ったのか、
隣の新婦席に座ってくれた心優しい見ず知らずのマレー女性に対し、
日本流に深々とお辞儀をしてこう言った。

「末永く宜しくお願いいたします。
___________バツイチですけど。」