時刻

黒毛和牛追加で。
あっボクも。
あっワタシも。
こっちも追加で。
キミらたまには豚も喰いや。
ツカサさんこそ野菜食べた方が良いですよ。
嫌や。今日は野菜を食べんでも良い日なんじゃ。

店に入る前に自分が言った「午後8時になったら教えて。」
という言葉を気にとめておく余裕など、
綺麗なサシの入った霜降り肉を目の前にした我らの中で
誰一人として持ち合わせておらず、ただひたすらに
その霜降り黒毛和牛を鍋の中で煮え立った出汁に
くぐらせてはオノレの口に運ぶ、その繰り返しの「作業」に
夢中になってしまい、ひととおり腹も満たされた頃には、
約束の時刻はとーーーーーーーーーっくに過ぎていて、
あーやっぱりキミらに頼んでおくんじゃなかったと、
テーブルの向かいのFくんとHちゃんを、死んだ魚の目を
して咥えタバコ姿で責めてみたりするも、時すでに遅し、
嗚呼やんごとなきかな。

「アンタが生まれたがは夜の8時ぞね。」
夕方、電話で話した時の母親の言葉を
タバコの煙の先に思い出す、
もう余りめでたくもない誕生日__________。