花より団子

「驚かせてやるんだからKには内緒にしててね。」
今日で数えの70歳になる新宿宿2丁目のオカマスターK氏の
誕生日を祝うべく、K氏本人には内緒で、はるばる四国から
出てきた60歳半ば過ぎのオカマ、いや失礼、四国の御仁と、
(「無知な善意のテロリスト」2011年3月21日参照)
新宿の某一流天ぷら料理店で夕食を済ませ、2丁目に向かう。

途中、厭味の意味も込めて買った一輪の
芍薬(シャクヤク)の花を手に、
「立てば芍薬、座れば牡丹〜♪ねぇ、Kはどんな顔をするかしら?」
などと、相変わらずのおネェ言葉で、崩れた鬼瓦のようなその顔を
さらに崩し、悪戯っ子のような笑顔を浮かべる姿が可愛くも見える。
自分の名誉の為に言っておくけれど、ここでの「可愛い」は、
異性に対しての「可愛い」という感情ではなく、例えるならば
お爺ちゃんやお婆ちゃんが可愛く見える時のようなものなので
くれぐれも誤解の無きよう。

K氏の店に到着し、最初は予想通りというか、まーご想像通りの
サプライズとK氏の喜びようであったのだけれど、
ほどなく、K氏抜きで某一流天ぷら屋に行った事が本人に知れ、
お年寄り同士、いつもの罵り合いが始まる。

「アンタ、誕生日のボク抜きで行くとはどーゆー事よ?」
「あらアンタ、天ぷら嫌いって言ってなかったかしら?」
「彼処の天ぷらは別よっ! アンタ、ケチねー。!」
「あら、それがはるばる出てきた友達に対する言葉かしら?」
「あらアンタ、いつから友達になったの? お偉いのねー。」

お互い命に関わる大病を患っている最中の年寄りとは
思えない、そんな二人の元気な罵り合いを見守る花一輪。
果たしてこのオバチャンたちは、この芍薬(シャクヤク)の花言葉が
「はじらい・はにかみ・内気」と知っているのだろうかと、
ふと思った月曜日___________________。