思い出20,000円

今ではまったく使わなくなったフィルム式の古い一眼レフカメラと
広角レンズを始めとするレンズ達を売るべくバックに詰め込み、
冷たい小雨降る新宿の街を買い取り店まで歩く。

その昔、糖尿病で眼の見えなくなった知り合いから
「写真を撮るのが好きなら。」と、譲り受けたそのカメラで、
当時はデジタルカメラはもちろん携帯電話のカメラも無かった
時代だし、カメラはそれ1台しか持っていなかった事もあり、
『下手の横好き』の言葉通り、今のこのグータラな自分では考え
られない程、たくさんの人や風景をそのファインダー内から
覗いてきた。
そんな思い出の詰まったカメラを何故?とお思いのアナタ。
前にも言ったでしょ、「ボクには欲しい物があるのぢゃ。」と。
そりゃあ、そのカメラやレンズたちをボクにくれた知り合いの思いや、
買い取り店に向かう途中、写真を趣味とする友人たちの顔も数名
チラホラと浮かんでは来たのだけれど、今ではフィルムのカメラも
レンズも性能の良い物があるし、わざわざこんな古い物を他人に
譲るのもなんだか悪い気がしたのだよ。
ま、店のカウンターで査定をする店員さんが、そのひとつを手に
しながら、「この手の明るいレンズはいまだに需要があるんですよ。
デジカメにも使えますしねー。状態もまずまずだし。」と言った時には、
「あーやべー、知らなかった。」と動揺したのも事実なのだけれど。
結果、そのレンズ以外はほとんど価値がないようで、フラッシュや
フィルターなどその他のアクセサリーも含めて20,000円なり。
所詮『道具』とはいえ、オイラの思い出は市場価値2万円かよ、ちぇっ。
しかも欲しい物の10分の1にもならねぇ・・・。

音楽もカメラも、その時代のニーズによってその値段や価値を
決められてしまう。ニーズに応えて変わり続けるのも大切な事さ。
でも、敢えて変わらずに『不敵な笑み』を浮かべているヤツの方が
愛おしかったりするものだ。
と、「物欲に負けたその口で言うか!!」 な勤労感謝の日_____。