神様に弄ばれる夜

やたら制服警官たちと彼らに職務質問される人々が目につき、何か事件でもあったのかと思わせる今夜の新宿。
信号待ちをしているボクのところに、その警官たちより少しだけ先に彼女らは近づいてきた、幼さをその顔に残した3人組の彼女ら。携帯電話の画面に映る某ホテルの名前を指さし、「○○ホテルは何処か解りますか?」と、つたない英語でボクに尋ねてきたその発音で、彼女らが中国人である事はすぐに判った。
神様神様ぁ。よりによって思想もチンチンも"右より"なこのボクの前に、この中国人少女たちを遣わせて何をお試しになるというのですか?

最初は新手の『中国人少女売春』かとも思ったのだけれど、こんな冷え込む夜に小さい体を震わせている少女たちの助けを無視するようでは『ひとたらし』の名が廃るので、本来なら「ここを真っ直ぐ行けば着くよ。」と言えば済むところを「ついておいで。」と、自宅とはまったく方角の違うその道を、少女達を先導してホテルまで。
道中、携帯電話の翻訳の画面をボクに見せる少女。
「新宿。危険な男の人たちがたくさんいます。」
んーそうね、ある意味ボクが安全だという確証もないけどねー、だって思想もチンチンも右寄りなんだしー。などとシュールなジョークのひとつでも言えれば良かったのだろうけれど、そんな英語力がこのボクにあるはずもなく、そこは「そうね。」で済ませておいた。
神様神様ぁ、これで正解よね?

ボクたちの後ろを一人の制服警官が自転車で、ボクたちの歩行速度に併せて付いてくるが、逆に少女達のおかげで職務質問されずに済んだ。
しかし、本当に新手の『中国人少女売春』、もしくは新手の強盗であれば、この後、どこからともなく怖い風体のオニィチャンたちが現れ、きっとボクは有り金全部を巻き上げられ、キャッシュカードやクレジットカードの暗証番号を教えるまで何処かの暗い部屋で監禁され拷問され、そのオニィチャンたちの内、誰か一人でもホモなら、明日はきっと薬屋にボラギノールを買いに行かなければならないだろうなぁ、でも現金もカードも奪われた身では何ひとつ買えないだろうし、まぁオロナインは家にあるからいいか、と思っている間にホテル前に到着。

別れ際、カタコトの「ありがとう。」を言いながらこちらに手を差し伸べてくる少女一人一人と握手をした時、少女の一人がボクの手の冷たさに驚く。仕方ないじゃん。冷え性な上に、怖いニィチャンがいつ現れてもいいように、この寒空に片手だけは出しておいたんだもん。

少女たちと別れ、きびすを返すように今来た道を自宅へと帰る途中、ホラね、ボク単体だとお巡りさんがウンコにとまる蠅のように簡単に寄ってくる。
「あのぉ、少々お時間よろしいでしょうか・・・。」
神様神様ぁ。善行を行った人間へのご褒美がこれだったら、ボクは迷わずアナタに中指を立てますよ_______。

日記