選んだ道でまた夜は明けて

ボクの年齢の半分にも、いや三分の一にも満たぬ子供らから先日手渡された楽曲に、
飯を喰うのも寝るのも風邪をひいていた事すら忘れ、
それはそれはただひたすらに、一昨日に渡されたばかりの
メロディも歌詞も無い、其処に明確な意思すら感じないコードだけが
漠然と存在する、一言で言えば理不尽極まりない楽曲に、
あれやこれやして肉付けをしてゆくのだよ。
ちなみに締め切り本日午後3時。

学校の文化祭のオープニングでやるんだってさ。
明日には歌詞もメロディも付けて提出しなきゃならないんだってさ。
おひおひ、年端もゆかぬ子供に押しつけ過ぎだろオマエら。
なにはともあれ、締め切り本日午後3時。

途中、「こんなのやっぱり理不尽だ、あっかんべー。」と、
沖縄土産を片手にゴールデン街に逃げ出してはみたものの、
酒の席に届いた子ども達からの真っ直ぐなメールを見て
すぐに自宅に戻り作業を再開したのだよ。
とにもかくにも、締め切り本日午後3時。

世の中のサラリーマンたちは給料日だったって言うのに、
金にも成らない事にここまで精を出す自分が少しだけ寂しかったりも
するけれど、そんな感情とは裏腹にボクの身体はせっせとギターを
弾いたり鍵盤を叩いたり、時々ヘッドホンの匂いを嗅いだり。
してる場合か、締め切り本日午後3時。

これが自分の選んだ道ならば、空腹がなんだ、睡眠不足がなんだ。
これもひとつの「子育て」だと思って、さぁやれ、さぁ弾け、さぁ唄え。
仕事でもないのに納期に追われ、気づけばまた我が夜は明けて_____。