似つかわしくない場所で途方に暮れる

夕方。マレーシアで世話になっているボート屋主人の奥さんを始めホテルのママなど女性陣への土産を買う為、新宿の某生地店に赴く。客の9割ほどが女性で、残り1割がいかにも「服飾関係やってます」的な小洒落た身なりの若い男性客の店内。その中に、道を挟んだ向こう側の歌舞伎町から迷い込んできちゃいました、いえいえ万引き犯じゃありません的なオッサンの自分。どっからどう見ても浮いているのが自分でも解るし、たぶん「生地を買う。」という明確な目的で生地屋に入店したのは、何を隠そう生まれて初めてのような気がしないでもない。なので、余計に挙動不審になってしまう。そんな泳ぎがちな目を悟られないように、買いたいのとは明らかに違う商品の棚の前で、難しい顔で金額×メーターの計算式を空中に指で小さくなぞるオカマの演技を数回繰り返しながら、なんとか「和柄」のコーナーまで辿り着き、マレー人の彼女らが喜びそうなというか、いかにも日本っぽい桜柄の生地を数点手に取りレジまで向かったまでは良かったのだけれど。

解らない。果たして1枚につき何メートル買って良いものかが解らないのだよ。例えば、洋服にするには何メートル必要かだとかサッパリ解らない。あぁどうしようどうしよう、もうすぐボクの順番だ、あぁ。
ボクの前の服飾学生らしき男性客がごく自然に「2.5mで。」とサラッと言ったのが生地屋初心者のボクには何とも格好良く見えたので、ボクも彼の真似をして「2.5mでお願いします、ウフッ。」と、最後のウフッは言ったかどうかは定かではないが、そんな口調で切り出すと、当然、店員さんは言う通りに切ってはくれたのだけれど、果たしてこの長さで正解だったのかどうか、家に持ち帰った今の今でも解らないままの金曜日___。