遠雷の音を聞きながら

独り竿を振る小舟の上。西側の雲の隙間に傾いた太陽は、それでもまだ日焼けするには充分な陽射しをその穏やかな海に降り注いではいるけれど、その反対側、浜辺の後ろに見える山の向こうで夕立を知らせるその遠雷の音に急かされ、竿を置き、アクセルスロットル全開で一路浜辺を目指す午後6時。

舟を片付け一旦宿に帰り、シャワーと洗濯を済ませた後、再び戻った海岸通りに吹く風が、間も無く雨がやってくる事を知らせてくれてはいたけれど、夕食を摂るべくボート屋仲間たちと島の外れの食堂に向かうその途中、雷混じりの夕立に見舞われる午後7時半。

稲光と凄まじい落雷音に肩をすぼめながらも、それを楽しむかのようにみんなで大声で話しながら大粒の雨の中をバイクを走らせ、目的の店の近くまで来てはみたけれど店は閉店。近くの違う食堂で甘々のアイスコーヒーを流し込みながら雨宿りをし、雨が小降りになったと同時に会計を済ませ、片道2km余りのその道を大急ぎで戻り、宿に駆け込んだボクらの背後でその雨が豪雨に変わる午後8時半。

宿のレストランのキッチンで自分で勝手に作ったミーゴレンを食べた後は何をするでも無く、屋根を打ち付ける雨音の下で、ボート屋仲間やホテルのスタッフたちとギター片手に歌を唄ったりお喋りしたりした後、雨が止んだタイミングを見計らってそれぞれの村に帰るボート屋仲間たちを見送り、部屋に戻った午後10時。

再び遠雷に戻ったその音をシャレーのベッドの上で聞きながら、やけに今夜は身体が火照るように熱いのは、きっとアナタの事を思い出したからに違いないとエアコンの方を見れば。何の事は無い、宵の口の落雷で一旦停電でもしたのだろう、その動いていないエアコンに気づきスイッチを入れる午前0時前____。