正気の狭間で

新しい歯医者に行って来たよ。痛くなかったよ。でも麻酔が切れたら痛いよ、やっぱり痛いよ。

などと独り言を雨上がりの夜空にキチガイのふりをしてつぶやきながらボツボツと酔っ払いの増え始めた新宿をパトロール中、携帯電話が鳴ったので、誰だこのキチガイのふりが忙しい時に電話なんぞかけてくる奴は、と渋々受話器を取ると、「ツカサー、今から速攻で来てくれ。」と言う声は、紛れも無くメリージェーンの声の主。そう、つのだ☆ひろさん本人である。キチガイから正気に戻るには充分である。
「オイラ、なんか叱られるような事したかな? いや、マレーシアから帰国して間も無いオイラにそんな好機は無かったはず。」と、道中の車内であれやこれや考えている間に、ワイルドミュージックに到着。建物内の音楽学校をスルーして、階上にある☆ひろさん宅に「ちわーす、三河屋でーす。」と上がりこみ本人から話を聞いてみると___。

明後日から豪華客船・飛鳥IIの仕事で約1ヶ月半ほど日本を留守にする☆ひろさんなのだけれど、出発までに終わらせ無ければならない仕事が山ほどあり、おまけに先月から忙し過ぎて疲労がピーク。溜まっている仕事のうち明日までに終わらせなければならない仕事のひとつをボクに手伝ってくれと御大がおっしゃるので、ドラムは上手に叩けないけどソレなら出来るぜ叔父貴ぃ! と二つ返事で引き受けたものの、終わってみれば夜中の2時で、それでも☆ひろさんは眠い顔も見せずに最後まで自分と違う仕事スタイルのボクのわがままに付き合ってくれ、帰りはわざわざ階下まで見送りに来てくれたよ。

ありがてぇよ、ありがてぇよ叔父貴ぃ。でも早く玄関の中に入ってくれないと、こっちはキチガイに戻れねぇよぉ。と、その坂道を下るボルタレン鎮痛薬の効き目も薄っすらと切れ始めた午前2時過ぎ___。