はい、こちら電話PC相談室でございます
「あーもーイライラするわっ! もぅこのパソコン壁にぶん投げてやろうかしらっ!?」
電話の向こう側でオネェ言葉でキレる70歳の彼に、PCのメール設定について教えたり彼をなだめたりしてかれこれ1時間余りになる。しかも、こちらがする説明が悪いのか、彼の理解力(オツム)が弱いのか、同じ箇所での堂々巡りをこの数週間で何度もしているのだけれども、毎回「じゃまた今度にしましょう。それまでその買ったばかりのPCを壁に投げつけたり、酒をかけたりしないように。」という癇癪持ちの彼への忠告で終わる電話パソコン相談室。
普段からMacを使用している人間に、PCの、しかも新しいWindows8の設定の教えを請う事自体がそもそもの間違いのような気もしないではないが、たとえ理解力(オツム)が弱かろうが歳を取っても新しいモノにチャレンジする彼の情熱を無碍(むげ)に切り捨てる事は出来ず、こちらもインターネットで調べながら出来る限り丁寧に説明をする。説明はするのだけれども。
「あ、変なのが出た。"・・・このフォルダを開けません"」
「もう一度そのダイアログを最初から読んでみて。」
「もう消してしもた。」
「あ・・・そう。じゃあ、もう一度最初のスタート画面に戻って・・・。」
「もぅええわ! こんな物、壁にぶつけてやるっ!」
「パソコンも壊れるし、それに壁の修理代も嵩むだけよ。」
「じゃあ庭に投げるもの。」
「庭に投げる前に、コンセント抜いてから窓ガラス開けるまでの動作の間に冷静になれるよね。それとも窓ガラスまで割るつもり? そっち大雨でしょ? バカじゃないの?」
「・・・そうよね、やめとくわ。」
一応、いい歳した男同士の、かたや中年かたやもうじき後期高齢者の会話である。
そして今夜は、そんな長電話がもったいないと思い、スマートフォンを持たない彼のPCに無料通話の出来る『Skype』でも入れさせようとしたのだけれど、インストールの段階で躓いたらしく、結局向こうが余計にわめき散らすだけとなった、台風11号が四国に近づく夏の夜___。