生き様を有り難う

今夜の八重樫 東vsローマン・ゴンザレスのWBC世界フライ級王座戦を観た人にしか解らない話で申し訳ないのだけど。

「こりゃ各団体のチャンピオンが挑戦を受けずに逃げ回るのも無理ないわ。」
ボクシングファンからはロマゴンの愛称で知られるローマン・ゴンザレスの試合を観てそう思ったのが、昨年11月、つのだ☆ひろさんに連れて行ってもらった両国国技館での事。試合後、会場ロビーでファンに囲まれるロマゴンに「オメェ半端なく強いなー。」と握手を求めたところを彼の出身地でもあるニカラグアの大使に作り笑顔で軽くあしらわれた記憶が蘇る。

____あれから数ヶ月。
「誰も受けないんなら俺が。強い奴を倒してこそのチャンピオンだし。」
と、名乗りをあげたのが八重樫 東であった。いやいや、明らかに自分より弱そうな挑戦者ばかりとの興行目的だけのマッチメイクを重ねて「俺が最強じゃ!」とか平気で抜かす紛い物世界王者もたくさんいる最近のボクシング界。そんな中でも八重樫は本当に強い世界王者として自分のような俄ファンから玄人ファンの誰もが認めてはいるものの、ロマゴンの神がかり的な強さもボクシングファンの中では共通認識なわけで、たぶん八重樫の負けが濃厚な試合。それでも僅かな望みと、本当に強い者同士の真剣勝負を見られる喜びを胸に試合開始のゴングを聞いた。

ラウンドを重ねる毎に腫れてゆく八重樫の顔。それでも彼は小細工など一切無しで真正面からの打ち合いを望み、相手のロマゴンもその気持ちに応えるかのように打ち合う。
インターバルの間、コーナーに腰をかける八重樫の両瞼は赤く大きく腫れ、そんな状況の中でもトレーナーの「打ち合うのか?」という問いに対し、微笑みながら頷く彼の姿に心が揺さ振られた。
そして試合は9回。ほぼ一方的に撲たれながらも諦めない八重樫の肩をレフリーが抱きかかえ試合を止め、結果、ロマゴンはミニマム級・ライトフライ級に続きフライ級でもチャンピオンとなり三階級制覇を達成したわけだけれども、同じ日本人として負け試合を見せられた割に、悔しさよりも清々しさの方が強いのは、やはり八重樫 東という男の愚直なまでに真っ直ぐな生き様を見せつけられたからであろう。

八重樫 東は本当にバカで本当に格好良い男である___。

日記