風来坊の言い理由

旅は良い。
慣れない土地で迷子になったり、慣れない言語に戸惑ったり、食べ物が自分の味覚に合わなかったとしてもなんとか食べてみようと努力をしてみたり、移動中に襲う睡魔や軽い体調不良と闘いながらも車中からの景色をその目に焼き付けようと頑張ったり、自分の経験不足で起こるハプニングの数々も、たとえそれが怪我や病気であったとしても、その時の景色も音も匂いもその全てがダイナミックに脳幹にまで響いて来る。

来月21日から出発するマレーシア・パンコール島への渡航も今回で14?15度目?と、10度目を超えたぐらいから記憶も曖昧なほどで、クアラ・ルンプール国際空港について翌日に島の定宿の門をくぐるまでの間、言葉に困る事もなければ道に迷う事もなく、食事をする場所から乗り物のチケットの買い方までなにひとつ滞る事もない、敢えて心配するなら加齢による自身の体調管理だけなのだけれど、万が一病気になってもだいたいの病院も把握しているので、やっぱりこれは旅ではなく里帰りなのだよ。都内で自分が行き慣れていない場所に行く時の方がよっぽどドキドキする。

正直、現地の友人たちへの土産でさらに重くなったバッグを引き摺った状態でのこの部屋からあの島までの、もうドキドキもしない景色を含む道程の長さを考えるに、ときめきよりもため息の方が出てしまう今回の越冬も、始めに書いたような様々な経験をそれはそれは見事にというか無様に積み重ねた過程があってのため息であり、周りには「慣れすぎた場所で金も時間も使った上にタダ働きとか、いったい何をしに行っているの?」とよく聞かれるけれど、自分にとってのパンコール島は以前にも書いたように(「週末の土産話」2014年4月)、「つまらないけど幸せな時間」を実感出来る大切な場所のひとつなのだよ____。