平和な冬の片隅で

未だに痛みの取れぬ腰にコルセットを巻き、寝癖の髪の毛を帽子で隠し、近所の小学校に選挙の投票に行ったその足で新宿に出てみたのだよ。冬の陽射しに吐息が白くキラキラと溶けるのを寄り目で確認しながら、陽の当たる場所を選び歩く。脳内で忌野清志郎の『太陽の当たる場所』が流れる。ま、とりあえず平和だ。

丁度、ビル影に入った時に、家を出た辺りから自分が尿意を我慢していた事を思い出し、かといってクリスマスシーズンの休日という事もありお洒落な格好をしたカップルで賑わう繁華街の通りを、独り小走りするのも恥ずかしいので、周りに挙動不審に見られない程度の早歩きにテンポアップ。脳内BGMが清志郎からユーロビートに変わり、平和に怪しい雲がかかる。

我がチンチンの根元辺りまで迫って来ているその緊迫感をいたって平常心を保ってます的な表情で覆い隠し、賭博場の自動ドアをくぐり、遊戯台へは脇目も振らずそのまま真っ直ぐ男子トイレへ。無事、男子トイレの小便器の前に立ち、ユーロビートは一旦止まり、ズボンのジッパーをおろし先客の隣のオッサンと並んで仲良く・・・と思った次の瞬間、割と腰の低い位置に巻いてあったコルセットに気づく。おまけにズボンの下には冬は手放せない防寒用のスパッツも履いていて、解りやすく説明すると、我がチンチンに辿り着くまでには外側からジーンズ→スパッツ→コルセット→パンツという、幾重にも重なった壁を突破せねばならぬ。しかも、寒さを防ぐ為にスパッツとコルセットの間に下着のシャツの裾を丁寧に挟んであったりする。1度油断した尿意はちょっとやそっとじゃ収まらぬ。一旦止まったユーロビートの代わりにかかった2ビートのオイパンクに追われるように、ズボンのベルトを外し、ボタンを外したジッパー全開のV字の渓谷を猛スピードで突き進むかのように、はぐってはぐってまたはぐる。途中、コルセットの部分で勢い余ってマジックテープが剥がれたビリビリというその音に、隣のオッサンがギョッとした風にこちらを見て立ち去るのを視界の端に、進めよ進め突き進めオイオイオイ!
____時限爆弾で云うところの残り0.01秒。バッハの『G線上のアリア』と共に無事解放されてゆく、先程まで自分の敵にさえ思えた同士たちの歓声も次第にやんで、最後まで諦めずに頑張って今は燃え尽きたように眠る我がチンチンに丁寧に掛け布団をかけてあげるように、重ねて重ねてまた重ねて仕舞う、平和な、とても平和な冬の日曜日____。