旧正月2015

普段は人も少なく静かな海岸通りに大勢の観光客が溢れ、その隙間を車やバイクが縫うようにノロノロ走る旧正月初日の夜。
客受の悪いストリートミュージシャンの友人に呼び止められ、ウクレレみたいな小さいギター片手に数曲唄っている間に、こんなローカルな島で唄う日本人という物珍しさからか立ち止まる観光客が次第に増え、人集りが出来たところでこちらも伝家の宝刀を『ドラえもん』を披露。
昼間、体調不良とボートが空く暇もなくイカ釣りにも出られず、ほとんど部屋で寝ていたおかげで温存していた体力を『ドラえもん』に集中投入した結果、客たちの大合唱が生まれ、目の前のケースに次々に小額紙幣が放り込まれ、その度に歌の合間を見て「ありがとうね」と御礼を言う律儀さを忘れず、楽しい夜は更けてゆくのだけれど、演奏がすべて終わった後で、毎度の事ながらこの夜ボクがそのほとんどを獲得したチップの分け前をボクに一銭も分けてくれない友人ミュージシャンに「明日も唄ってくれ。」と頼まれ、快い返事を返しながら「でもオマエの為じゃなく聴いてくれるお客さんの為にね。」と、心の中で舌を出す、相変わらず捻くれ者のボクに「お疲れさん。」とジュースを差し出してくれる近くの屋台のおっちゃんの心遣いが嬉しい旧正月______。