カサブタ日記

______心のカサブタさえ上手に剥がせやしないのに。
歌の歌詞に出て来そうな文句を胸の奥でブツブツ言いながら、傷口に消毒スプレーを吹きつける。
実は去年の末頃にパンコール島で、何をしていて出来たのかも忘れたくるぶしの内側の傷が未だ治らず往生している。言い方を変えるなら、これは約4ヶ月もの間、毎日毎日くるぶしの傷と向き合って来た男の物語である。

くるぶしの内側という箇所は、自分が思うよりもたくさん何かにぶつけたり何かと擦れたりする箇所のようで、向こうにいる間は、ぶつけたり擦れたりした時の痛みを軽減する目的と、傷口に蠅がたかるのを防ぐ為に、其処に絆創膏を貼り、毎日こまめに消毒と絆創膏の交換をしていたのだけれど、いかんせん日中は海の上で、くるぶしの部分は海水がかかったり浸かったりしているし、陸に上がって傷口を乾かそうと濡れた絆創膏を剥がそうものなら、蠅たちが一斉にその部分だけにたかって痛むのでそれも出来ず、途中、絆創膏の上から何かにぶつけて再び悪化したせいもあり、おかげで約2ヶ月半もの間、カサブタが出来ず、そのままでの帰国となった。

日本の寒い気候と乾燥具合に任せれば傷もすぐに塞がるだろうと高をくくっていたのだけれど、日本に帰って来たら帰って来たで、寒いので靴下が手放せず、結果、治りかけの傷口が靴下の繊維とくっついてしまい、靴下を脱ぐ時に靴下と一緒に出来たてのカサブタも自分の足から剥がれてしまい、「痛たたたた。」という言葉と共に元通りという、そんな毎日。それは絆創膏やガーゼを試しても同じ事だった。

ここ最近は比較的暖かくなってきたので、家に居る時は足先だけ靴下を履き、踵から上は素足というなんともだらしのない格好でいるのだけれど、そのおかげでカサブタが出来はじめ、おおこれでやっと治るぞと先が見えた頃に、外出せねばならぬ事が多く、傷口に絆創膏を貼り、その上から靴下をちゃんと履いても、歩く時には痛いし、自宅に帰って来て外側にまで血の滲んだ靴下を剥がすと、絆創膏の裏で再び傷口が生身を晒しているという"振り出し"に再び戻る。

カサブタさえちゃんと出来ない己の身体に落ち込み、「こんなんじゃちゃんと前を向いて歩けないわ。」と、失恋の乙女みたいな気分になったかどうかはともかく、他人から見ればその程度の事でも自分は真剣にサボる為の言い訳に使わせて頂いている間に、気づけば桜も散り始めた4月の始め____。