何もせぬ鶴

台風10号の暴風の中、まるで紙飛行機のように風に煽られながらも、なんとかその機体の足を滑走路に付け、沖縄・那覇空港に無事到着した昼過ぎ。

タクシーに乗り込み、今年4月から那覇市に引っ越したY子さん(故・柏木和美の奥方)宅に直行。荷物を降ろし、仏壇の遺影に手を合わせる。「大好きだった沖縄への引っ越しおめでとさん。」

Y子さん宅のインターネット整備がボクの本来の役割なのだけれど、今日はまだ雨風も強く外出出来そうに無いのでそれは明日からにして、結局昼過ぎから夜遅くまで故人が生前愛用していたシルクのパジャマに袖を通し、Y子さんの用意してくれた料理に舌鼓を打ちながら二人でお喋り。
「こんなにもてなしてくれて、これで何もせずに伊平屋島に行ったらただの穀潰しだね。」と笑い合ううちに夜は更け、故人の口調を真似ながら「あちらの部屋で旗を織ってまいります。けして覗かないでおくんなさいまし。では。」と、やっぱり故人に似せた穏やかな笑みを浮かべながら布団の敷かれた客間の戸を閉めて10分もしないうちに寝てしまった沖縄初日の夜___。