ブルーとオレンジ、ストリッパー

転覆に笑い、目指すのとは違う方向に進む舟に笑ったハーリー競漕で幕を開けた第27回いへや祭り。
その祭り会場から野甫島へと掛かる大橋を渡ってすぐの場所に在る小橋の下の日陰で、時間が進むに連れてその青色を変えてゆく伊平屋島の海を目の前に、ビーチチェアに腰駆けビールを飲む者、音楽を聴く者、うたた寝をする者、泳ぐ為に波打ち際に向かう者、魚影の濃い島の裏側にシュノーケリングに繰り出す者、これだけたくさんのメンバーがいて銘々が自由気ままに過ごすのが毎年のスタイル。

そしてボクはボクで炎天下の中を釣り竿片手に野甫島から沖へと伸びる突堤を独り、ガーラ(ロウニンアジ)の影を追って歩き、その姿を海面下にみつける度に、海に落ちないように気をつけながら突堤脇のテトラに降りて竿を振る。がしかし、ガーラはボクの投げ入れたルアーに興味を示すものの、なかなか追って来てくれずに優雅に何処かへ泳ぎ去ってしまう。

ターコイズブルーの水中を、背後に何も引き連れていないオレンジ色のルアーだけが、弱った小魚の振りを最後まで真似ながらこちらに向かって戻って来る様子は美しく、且つ健気である。そんな、人影まばらな客席からこちらを見る客もいないそのステージ上で何度も足を組み替えるストリッパーのそれにも似た健気さを演出しているのは自分自身の竿さばきなのだけれど。
波打ち際付近でエサ取りと呼ばれる小型の色鮮やかな熱帯魚たちにひとしきり弄ばれた後にスッと水面から空中へ上がるルアーをそのまま巻ききってからテトラを上り再び突堤を歩きながら魚影を探し、みつけてはテトラを下り腰を、もとい竿を振る。その繰り返し。炎天下で帽子も被らず日焼け止めも塗らず飲み物も持たずタバコを吸うのさえ忘れて竿を振る事1時間。釣れたのは、ルアーの健気な動きに同情した奇特なイシミーバイ(カンモンハタ)1匹。ホラね、懸命に身体をくねらせればそれに応えてくれるお客は必ずいるよストリッパー。

青い海原の向こうの祭り会場のマイクアナウンスを微かに混ぜた海風が日に焼けたうなじに心地良い正午過ぎ____。