その手を繋いでゆけばそれもまた社会

肩をすぼめて座る自分の視界の両端。右端では若い女性がファンデーションケース片手に化粧をし、左端ではこれまた若いスーツ姿の男性が足組ポーズのまま顔面近くまで近づけたスマートフォンを親指でなぞり、双方ともタイム イズ マネーの勢いそのまま塗り塗りなでなで忙しない総武線午前10時。

宙に浮かせた視線の先では社会派週刊誌の中吊り広告が、事件、経済、国際問題と、様々な形でこの国の未来を嘆くけれど、例えば自分の両隣で、まるで自分だけの専用車と勘違いしているこの男女のような人も含めそれがこの国だと言うなら、自分が気がかりなのはこの国の未来でもなんでもなく、郷里で暮らす母親だったり、しばらく連絡も出来ていないあの人だったり、これを時々読んでくれているアナタだったりする。

膝の上に載せた紙袋。その紐を握った両手の内側に収まる程度のボクの社会。
狭くて小さくて時に面倒臭くて、それでも拳の中の体温分だけ温かい___。

日記