思い出すのは座薬鎮痛剤を入れる時のあの違和感

音資料の下調べの途中、自身がボーカルを努めるhenssimoのCD「・・・ナノニベスト?」を久々に始めから最後まで途中飛ばす事もなく聞き返したのだけれど、もう9年も前に出したアルバムのそのサウンドに古さを感じない事に自分でも驚いた。まぁ、新しくもないけれどそんなのは当時から解っている事で、もちろん、別のアレンジャーの手に掛かれば今流行りのアレンジにも出来るのだろうけれど、やっぱりこれはこれでOKなのだと改めて頷くその1枚を聴きながらレコーディング当時を振り返ってみた。

つのだ☆ひろさんのスタジオを破格の値段でお借り出来たまでは良かったのだけれど、当時、自業自得が招いた問題によるストレスなのか、重度の「胸鎖関節症」なるものを煩い、声を出す度に胸に走る激痛を少しでも和らげる為、スタジオのトイレに隠れては病院で出された座薬鎮痛剤を「ンフ〜ン・・・」と鼻から長い息を吐きながら尻の穴に押し込み、薬の効果が効いている間のレコーディング中、ややもすれば、胸の痛み以上の何かに負けそうな自分を奮い立たせる為に「誰もスタジオに入れんといて。」と技術担当のH氏にお願いし、全裸で唄入れをしたあのバカは確実にそのアルバムの中で、時にその何かを振り払おうと藻掻き、時に受け入れようと肝を据え、それらすべては最後に自分が笑えるように、そして誰かが笑えるように、そんな祈りにも似た自分なりの儀式だったようにも思えるが、端から見ればただの変態だ変態。

「まだやってんのかよ。オレの仕事出来ねーじゃんかよ。」
度々スタジオを覗きに来る御大☆ひろさんの仕事が差し支えるほど大幅に伸びたミックスダウン中も、「こんな景色が見えてくる迄は帰さねーよ。」と、最終電車の時刻を気にするH氏に無理難題ばかりをお願いしては削って足してまた削るを繰り返して出来たそれを聴き返し、「いやまだ見えてこんし。」とまた削る。そんな作業の繰り返しの果てにようやく仕上がった音源の次に待っているのはジャケットデザインでこれまた連日連夜の徹夜の日々。丁度この『旅の途中』を書き始めたのもその頃だったか。

_____で、時は今。
その9年も前に出したhenssimoアルバム『・・・ナノニベスト?』も、RKC高知放送を始め応援してくれる方々のおかげで、ポツリポツリではあるけれど今現在も注文してくれる人がいる。本当にありがとうね。「聞き飽きたらCD盤面はカラス避けに使えるデザインにしてあるし。」の文句は今も昔も変わらないけれど、それに加え「うん、今聴いても大丈夫。」と言えるのが嬉しいのだけれども、正直「アンタ、売る気だとか売れる気あんの?」と聞かれれば、うーんと首を傾げてしまうところも昔も今も変わらぬ姿だったりする。

もう既にお持ちのアナタも気が向いたら聴き返してみてね。座薬鎮痛剤を入れた全裸の男とそんな彼に振り回されるメンバーの姿を想像しながら___。