闇雲浪漫

【定石/定跡】
1. (定石)囲碁で、昔から研究されてきて最善とされる、きまった石の打ち方。

2. (定跡)将棋で、昔から研究されてきて最善とされる、きまった指し方。

3. 物事をするときの、最上とされる方法・手順。___デジタル大辞泉より


ミュージシャンの端くれのくせに楽器店よりも釣り具店の方が楽しいのは、定石とされる方法以外での可能性が未だ多くあるのではないか?という、早い話、ビギナーだからこそ持てる夢物語に過ぎないのだけれど、小学校時代、漫画『つりキチ三平』がバイブルと読みふけり、授業を終え真っ直ぐ帰宅したその足で宿題もやらず、ほぼ毎日釣り竿片手に友人らとチャリンコ漕ぎ漕ぎ出掛けた近所の港や防波堤で、定石からハミ出した独自の方法で獲物を釣り上げた時の興奮が未だに心に染みついて取れない者にとっては、やっぱり釣り具店は『狩りの道具』というか『冒険の道具が揃う場所』でもあるわけで、今日も入店から精算を済ませてその釣り具店を出るまでの楽しい妄想に、あっという間の2時間を費やし____。

____すっかり暗くなった帰り道。
でもそう言えば小学校時代も、漫画『つりキチ三平』の仕掛けのページはちゃんと読んでいたし、よくよく考えれば『魚別釣り方入門』みたいな本も数冊は持っていたなと思い出し、嗚呼そうだ、あの頃は定石に沿った道具を買い揃えるお金なんて無かった子供だったからこそ、仕方なしに独自の方法を考えていたんだったと。
あくまで最初に定石在りきの独自方法だったわけで、こうして闇雲にルアーだけを1万5千円も買い漁る金があるのなら、まずは今一度『釣り入門書』を買った後、必要な道具だけを揃えりゃ良かったんじゃないかと、一瞬大人に戻ってしまうも、フッ、そんなの男の浪漫ぢゃーない。釣ってやる大物を。

闇雲な浪漫が詰まったビニール袋を提げて家路を辿る男と、選挙権を持たぬ中国人観光客たち相手に選挙カーの中から懸命に手を振るあの候補者。双方の愚かさが交差する横断歩道。
どちらの愚かさに対しての答えもあと2週間ちょっとで出る7月最後の土曜日___。