アタリくじの付いた糸

朝7時。自宅を出てタクシーで新宿バスターミナルへ。
羽田空港までの高速バスのチケットを買おうとしたら、券売機の前に立つ係員に「8時過ぎまで満席でして・・・。」と言われ、それでは自分たちの乗る飛行機の出発時刻に間に合わないので、再びタクシーに乗るという始末。国際線ターミナルが出来て以来、高速バス(特に新宿発)の予約は必至となったので、ちゃんと覚えておこうと自身に言い聞かせたのはこれで3度目。今度は忘れないように此処に書いておこうかね。

タクシー乗り場で「1台後ろなら乗り心地の良さそうな個人タクシーだったのに。」と、ハズレくじを引かされたような思いで、少し型の古いタクシーに乗車。
この型の古い車の運転手さんが少し個性的で、事情を説明し「羽田空港まで超特急で。」とお願いすると、「どうでしょうねぇ。この前のバスたちが同じ方向に出てゆくんで、これらをなんとかしない事には・・・。」と、のんびりとした穏やかな口調で返して来たのとほぼ同時に、ギュギュギュンとバス数台の傍らを追い越し、半ば信号違反気味でバスターミナル出口から甲州街道に左折。身体にかかるGが半端ない。連なるバスをかわす事が出来たと思った矢先、今度は前方に停車している車が。「此処は駐停車禁止なんですけどねぇ。」とまたもや穏やかな口調で言ったかと思えば、その車に対してこれでもかというほどのクラクションを浴びせる。お陰でその車をかわす時にそのドライバーからボクが睨まれたぢゃないか。

高速に乗ったら乗ったで、飛ばす飛ばす。しかも喋る喋る。その穏やかな口調とは裏腹のレーサー並みのハンドル捌きに、自分の隣に座っているハナモゲラッチョ・セバスチャンは朝から少し車酔いしている模様。その上、彼女は超が付くほどの他人見知りなのでこんな時はボクが運転手さんの話し相手をせねばならない。そんなボクの携帯電話に誰からかのメッセージが入ったので、運転手さんの話に適当な相槌を打ちながらシートの影でそれを読むと「ある意味、アタリやな。私一人なら絶対乗りたくないけどね。」と、隣から。返信に「アンタもちょっとは会話に参加してオレを休ませてくれ。しかも飛ばしてくれるのはいいけど、スピード違反で捕まったりしたら飛行機に乗り遅れるで。」
結果、運転手さんのおかげで20分ほどで空港に到着。時間が有り余ってしょーがない。

昼前。那覇空港に到着し、タクシーで故・柏木和美さんの奥さんが住むマンションまで。今晩は一晩だけこちらでお世話になる。
夕方。夕食を予約していた店の前で、伊平屋島から那覇に出て来ていた"ホテルにしえ"のおとーさんおかーさんと合流。この二人ともかれこれ25年の付き合いになるのだけれど、どれもこれも故・はらたいら氏や故・柏木和美さんが紡いでくれた糸のおかげなのだよ。
みんなで楽しい夕食を済ませ、再びマンションに戻ったところで肝心の和美さんの仏壇に手を合わせていない事に気づき、「和美さんの仏壇が沖縄にあるんだもんなぁ、なんだか不思議だねぇ。ま、生前に最後は沖縄にでも住みたいって言ってたから結果オーライか。」と、自分の家のリビングにあるのと同じ遺影の飾られた仏壇に手を合わせた沖縄初日の夜___。