コンビニと猪

中途半端に便利なB級アイランド・パンコール島。

午後11時半。ボート屋主人の家がある村からバイクで帰りがてら、一昨年この島にオープンしたばかりのセブンイレブンに立ち寄り買ったタバコをポケットに、こんな夜遅くまで開いている店がある嬉しさの半面、年々近代化してゆく島の現状を心の片隅で憂いながら走る真っ直ぐな海岸通り。左手に広がる海岸の向こうには、高級リゾートで知られるパンコール・ラウ島の水上コテージの灯りがいくつも連なる。

徐々にホテルも民家も少なくなり、丁度峠道の入り口に差し掛かった辺りで、暗闇から吠えながら現れた野犬2匹に追われ、片方の足で追い払いながらアクセル全開で峠道を上り、なんなく野犬は振り切ったのだけれど、普段より速く脈打つ鼓動の音が、曲がりくねった長い峠道に唯一響き渡るボクのバイクの音より大きく聞こえる。
幾つも上り下りを繰り返し、ようやく心拍数も平常に戻り自分の定宿のある海岸通りの灯りが見えるその最後の坂道をスィーッと下りながら、やっと安心出来る場所まで戻ってきたと思いきや、「もののけ姫」に出てくる「おおこと主」を連想させるくらい、それはそれは大きな猪が道路をノソノソと横切る姿がオレンジ色の街灯に浮かび上がり、そのままぶつかってもバイクのボクの方が圧倒的に分が悪く思えたので、反対車線にはみ出してそれをかわしたのだけれど、再び上昇した心拍数を深い呼吸で整えながら、今度から「セブンイレブンの便利さと野生味を兼ね備えたB級アイランド・パンコール島」に言い直さなくてはと思った帰り道__________。