知らぬが仏とクリスチャン

急遽決まった翌日からの海外出張の為に、本日帰京する彼女ハナモゲラッチョ・セバスチャンの乗ったフェリーを港で見送った伊平屋島3日目。

そう言えば、一昨日の夜、島の居酒屋で出た刺身。その日の夕方にボクが沖で釣って来たその魚の白身は他の高級魚にも勝るとも劣らないほどの美味で、「このお刺身、本当に美味しいねー。」と、次々に箸を伸ばす仲間たちの腹の中にあっという間に消えていってしまい、一度も箸を付ける機会のなかったボクと彼女の二人は、その後も何ら変わりなく泡盛を飲みながら楽しく過ごす仲間たちの様子を、一種の安堵感と共に見守っていたわけで。

というのも、ボクが釣って来た魚はシガテラ中毒を引き起こす『ナガジュー・ミーバイ(バラハタ)』という毒魚。とはいっても全ての個体が毒を持つわけではなく、その見分け方があって、ボクの釣って来た個体は毒を持っていないという、魚を捌いてくれた島の居酒屋主人のその言葉を「はいそうですか」と素直に受け止めるには幾分歳を取り過ぎたらしく、大事な海外出張を控える彼女と、今年前半に傷口が悪化したり高熱を出したりですっかり抵抗力の衰えた自分は、その刺身に箸を付ける勇気が無かっただけで、毒魚と知らずに食べた者、その情報をうっすら知っていながら食べた者、誰一人欠ける事なく翌朝の朝食の席に顔を揃えられた、当たり前のようであって当たり前でないその奇跡に感謝します、アーメン___。