庭師のち釣り師

日中、宿のテラスの椅子に腰かけて海の様子を眺めるのが大好きな自分にとって、宿の家族たちが考えも無しに次から次へと植えた植物たちがすくすく伸びた今夏は、身体の態勢を斜めに倒したり、首を不自然に傾けないと海が見えず、自称・宿のサービス担当としてもこの事態は放ってはおけないのだよ。

____よし、ぶった切ってやる。

庭先に置いてあったデカい剪定ばさみを手に、去年まで海が見えていたその場所にガシガシと草木を掻き分け入り、邪魔をしていた植木をチョキチョキ、チョッキンとな。任務完了。これでまたテラスの椅子から海が眺められる。と、植え込みの中から戻ろうとする自分に宿の家族の声。

「ついでに彼処も彼処も切っておいてー、サービス担当さーん。」

ぬぬぬ、「サービス担当」の文言を出されては断れぬ。と、宿の裏から持って来た脚立に上り、晒した両足を蚊に喰われたり、逃げ惑うセミたちに小便をひっかけられたり、「お手伝いするー」と寄って来た宿の曾孫にせっかく一箇所に集めた葉っぱを元の場所に戻されたりしながら、なんとか庭木たちの剪定を終えた頃には、暑さと精神的疲労でヘトヘトさ。

夕方から、仕事を終えた宿の長男と沖釣りへ。
ベタ凪の海の上、釣り竿をゆっくりと上下に振るその身体に、心地良い海風を受けながら暮れゆく伊平屋島を眺める。このひと時も、テラスから海を眺める時間と同じぐらい大好きな時間___。