夢の切れ端を片手に

浅い眠りの中で見る夢は

マレーシアのクアラ・ルンプール国際空港に到着した飛行機の機内で、たまたま隣に乗り合わせた若いタイ人女性の誘惑に乗ってしまったせいなのか、強制的な荷物検査を受ける事となり、これまた若くて美しいキャビンアテンダントの女性がボクのスーツケースのキャスターを全部外してしまうという、夢にありがちな矛盾をはらみつつ、こっちは少しでも早く機外に出たいので、もういいか? キャスターを元に戻してよと言うと、元になんか戻せるわけないじゃない、さっさと行けば? と悪びれた様子を見せる事もなく、その美しいご尊顔をこちらに真っ直ぐ向けもせず言うので、美しい分だけ余計に腹が立つも、結局何も言い返せずにターミナルに降りたってみれば、其処はまだ成田空港で、おまけに震災かなにかで少し崩れていて、いかんいかん、このままでは飛行機に乗り遅れてしまう! と、夢のあちこちに仕掛けられた矛盾と非日常に気付く事もなく、コンクリート瓦礫と漏水の雨垂れを避けながらキャスターの外された重いスーツケースを両手で担いで着いたエレベーター前は、エレーベーター待ちの人でごった返し、こんなのに乗っては新型コロナに感染してしまうしそもそも飛行機に間に合わないと悩んでいると、こっちが近道だ! と誰かが指さすパーキングビルの坂を駆け上り、なんとかチケットカウンターに付いて事情を説明すると、搭乗ゲートの方にはこちらで手配しておきますのでパスポートをお見せ下さいというので、現実世界の旅ではいつもパスポートを入れている小型のショルダーバッグを探すも見つからず、時間だけが刻々と経つ中で焦りながら横腹の辺りを見てみると、口の開いたウエストポーチの中からパスポートの端が顔を見せていて、おお!これこれ! と提示して手続きを済ませた後、多くの欧米人たちが飲み食いする居酒屋の小上がり座敷のマス目を抜けた後、まるで古い病院の蛍光灯色のような薄緑色の殺風景な通路を走って上って曲がってようやく辿り付いた搭乗ゲートのカウンターで、この飛行機に乗る予定のトミオカですけど! と身を乗り出すと、ボクに対応するスタッフが目を逸らした視線の先、横の横の横のそのまた横10mほど先でようやくカクンと直角に曲がったカウンターに座る別のスタッフが、ボクの目の前のスタッフに目を細めて口を真一文字にしたまま首を横に小刻みに振っているのを見て、ええ!? ダメなの!? また行けないの!? と泣きそうになる夢だったり。

これから縁日の出店風景の撮影を背後から撮りますので、あれこれ散策して楽しんでいる仲の良い恋人風な演技でお願いしますと言うスタッフからの注文に、少しだけの戸惑いをズボンのポケットに押し込んだままの左手の肘辺りに、なんの躊躇いもなく回してくるアナタからの腕組みにドキドキしながらも、二人が実際付き合っていた頃なんてもう昔の事だし、これは演技なんだしと自身に言い聞かせながら、世間一般的なごくごく普通の爽やかな彼氏を演じようとするボクの肩に、時々もたれかかるように当ててくるアナタの頭におおいに惑わされながらも、何処か心地良かったりする夢だったり。

目が覚めて夢の続きの尻尾を掴もうと再び毛布に包まるものの、加齢というのは残酷で、そう易々と次の眠りに誘ってもくれず、覚醒しきっていない頭のままで見つめる薄暗い天井のクロスに、さっきまで見ていた夢の切れ端がスーッと吸い込まれてゆくのをただボンヤリと眺める夜明け前___。

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