心地の良い風が吹く場所で

とても居心地の良い呑み屋だった。
新宿ゴールデン街で唯一ボクが入る事の出来るその店は、地回りのヤクザみたいにいつまでも居続けるボクに嫌な顔ひとつせず、時々はなかなか次の行動に出ない腰の重い自分を、同じ郷里の土佐弁で叱ってくれたり、お気に入りのTシャツをプレゼントすると少女のように喜ぶ、そんなママがいる本当に本当に居心地の良い店だった。

長年やってきたその店を閉め、彼女が高知に帰ってからも、ボクが帰省する度にわざわざ逢いに街に出て来てくれたり、それは彼女が膝を痛めるまでずっと続いていた。
最後に彼女と逢ったのは、まだ双子女子が家内の腹の中に居ついたばかりの頃、お正月明けの昼間にみんなで焼き肉を食べに行った時、その時に健康状態を尋ねたボクに「うん、ちょっと膝が痛い」と言ってはいたのだけれど、それ以降、電話で話す事はあっても逢う事はなかった。

そんな彼女が亡くなった知らせを今朝、友人から聞き、嗚呼もう逢えないのか、「ツカサくん」と呼んでくれるあの声も聞けないのかと、淋しくてやりきれない。

henssimoを応援してくれライブにも足繁く通ってくれ、そしてこんなボクをたくさん褒めてくれ少しだけ叱ってくれた高校の先輩でもある彼女を想って見上げる新宿の空。
ボクたちの寛げる、腹を割って笑い合える場所を与えてくれてありがとうね____。

日記