恋の痛みよりもそれは痛いの?
病気の痛みランキングの堂々1位に輝く『尿路結石』。
ちなみに2位は痛風発作で、これによる激痛は過去に3度ほどやっているし、若い頃にはドリフのコントに出て来そうなヨボヨボの老医者に麻酔もまだ効いていないのに奥歯を砕いて抜かれるという、何が聞きたいの!? 知っている事は洗いざらい話すから!!と拷問を受けるスパイのような痛みも経験している。
その他にも、余り知られていない「群発頭痛」など、女性のお産に匹敵する痛みを数々経験してきている事から、自分は痛みに対してはかなり耐性のある人間だと自負していた、昨日の今日まで。
____数日前の宵の口。
いつものように子供たちが遊び回るリビングで、休憩のその都度、クッションに横たわっている父の腹の上を椅子代わりに、其処に座ってはテーブルのお茶を飲む娘の一人を優しく退けている何度目かの最中に、左腰にギックリ腰にも似た違和感を覚え「あー、これ、来るかも、来るかも」とソロリソロリと立ち上がって姿勢や呼吸を整えていたのだけれど、その左腰の痛みはどんどん増してゆき、おまけに左下腹部も痛み始め、「なんかいつもと違う」と思ったのも束の間、それらの痛みは治まる事なく、激痛への道をアクセル全開。
ソファの表皮を掻きむしりながら藻掻き苦しむ父の背後で遊び続ける子供たちと、他人事のように「救急車呼んだら?」と棒読みのセリフを発しながらキッチンで洗い物を片付ける家内。稼ぎの少ない、非生産者に限りなく近い人間とはいえ、同じ屋根の下で雨露凌いできた人間を誰一人心配してくれぬという孤独と激痛の双方を奥歯でギュッと噛みしめる間、
「嗚呼、いつか誰かを本気で好きになった事があったなー、あれは愛だっけ? それとも恋?」
と、過去に己が犯してきた業を走馬灯のように脳裏に駆け巡らせながら、まるで左腰は背後から家内に、左下腹部は前から恋人に、それぞれ同時に刃物で突き刺されたようなその激痛に
「死にて-」
「がんばれー」
「もーいやー」
「がんばれー」
とネガティブとポジティブな独り言を交互に延々と発し、リビングの隅で色々な姿勢や呼吸法を試すも激痛は治まらず、まさに七転八倒。
結果、家内が「ほい」と手渡してくれた痛風発作用のボルタレン100mgで激痛から鈍痛ほどに治まり、その夜は育児戦力外。
翌日、かかりつけ医に診てもらうも検査する術がないため「尿路結石の疑い有り」で処方した薬が切れる前に専門の泌尿器科に行けと言われ、本日までの数日間、ボルタレン25mg錠の8時間おきのリレーで襲ってくる痛みを和らげながら、CT検査の出来る某大学病院にかかるべく友人医師に紹介状を書いて貰っているのだけれど、レディスクリニックからの紹介状に、万が一何か言われたら「ジェンダーの時代」を大学病院のロビーに響かせてやる、無精髭のオヤジだけれども。
嗚呼、SMでお尻に鞭打たれ恍惚の表情を浮かべられる人に私は成りたい____。