あざとさ成長中
____おい、梅雨は何処行った?
そんな、うだるような暑さの中を双子女子たちの3歳児健診に行ってきたのだよ。
「今日は注射は無いし、大きくなったかなーとお口アーンだけ」
「家じゃないから、皆の場所だから走ったり暴れたりしないよ」
普段からの言い聞かせが功を奏し、他の3歳児のように会場内を駆けずり回ったり泣き叫んだりはせずに、不安と緊張感を眼に浮かべながらも自分達の順番を待つ間に、各部屋の様子を観察している、グニャグニャのゴム人形のポーズで。
順番がやって来て、オムツ1枚の姿で体重と身長を測り終え、次に向かった医師による診察の時、若い医師に「好きな食べ物は?」と聞かれた双子女子A。
さぁ、いつものように距離感を無視した大声で「モモとブドウですっ!」と答えてやれ、大声でこの若造の鼓膜をキーンいわしちゃれ、と、不穏な笑みを浮かべた私の膝の上の双子女子Aが答えた答えは。
「ト、トマトです・・・」
え!? トマト!? しかも声小っちゃっ!!
相手が褒めてくれそうな答えを言うあざとさに椅子からずり落ちそうになった。
傍らで順番を待ちながら全てを見ていた双子女子Bも、Aを真似して小さな声で「トマトでしゅ・・・」。
しかも、膝の上に座っているにもかかわらず、「気を付け」の姿勢のままなのは、この子なりに必死で考えたAとは違う「+α」なのだろう。
そんな3歳児の健気さに付き合う術を持ち合わせていない医師がさっさと聴診器の準備をしている間も、「気を付け状態」を崩さず、悪戯に私が耳元で「そのまま敬礼!」と囁いても微動だにしない三女B。
アンタもつまらん、この若造と同じように。
検診を全て終えての帰り道。
娘たちの乗る双子用ベビーカーを押しながら「アンタら、なんで嘘ついた?」と揶揄い気味に何度も問うてくるとーちゃんと照りつける陽射しが余程暑苦しかったのか、「だってトマトなのっ!」「なのっ!」とふて腐れ気味に、自身の頭上の屋根を自分で目一杯閉める双子女子。
ま、トマトは好きではないにしろ嫌がらずにちゃんと食べるし、彼女たちからしたら「嘘」ではないのだろうね。
そんな娘たちの成長が垣間見えた7月の始まり____。