強盗なのだよ!!(前編)

ついに日本へ帰国する夜。時刻はPM8:00過ぎ。
大きなリュックを二つ、体の前後に抱えたり背負ったりして、
空港に向かう為にプドラヤ・バスターミナルからマスジッ・ジャメ駅へ、
いつも歩き慣れた通りを歩いていたのだよ。

「アイム ツーリストポリス!」
という男の言葉が、突然耳の傍で聞こえたかと思うと同時に、
数人の男達に両脇を抱えられ、道路脇の薄暗い砂利道に引き摺りこまれた。
「やべぇ!強盗だ!」
ここからはまるでフィルムの早回しのような展開で、
ボクの体から二つのリュックを無理矢理剥がそうとする力に、
「日本のみんなに買った土産や、マレーの友人たちに
 貰った土産をテメェらにくれてやるわけにはいかねぇー!!」
と必死で抗う。
そして四方八方から飛んでくるパンチやキックを顔に胴体に太ももに浴びる。
ところが、幸か不幸かその攻撃のどれもが、
ボクの物欲、もとい『友を思う気持ち』を萎えさせるには至らなかった。
それに決して喧嘩は弱い方ではないという若かりし頃限定の思い出と過信が、
「かかってこいやぁー!! くぉらぁーー!!」
という雄叫びになってしまった。
しかし前に抱えたリュックをしっかりと押さえておく為に片手はふさがり、
もう一方の腕だけで応戦するという、なんとも情けない反撃。
しかも相手のパンチを避けようにも、バカ重いリュックのせいで
身動きも自由に取れない。
応戦していた腕も自然と顔の防御に回ってしまう。
「痛てててて。う〜・・・さすがにこりゃ勝てんか〜。」
かといって荷物を強盗に渡すのだけは絶対に嫌だった。

火事場のクソ力とはこの事か、
「トロン!!トロン!!(助けて!! 助けて!!)」と、
大声で助けを求めながら、リュックを引っ張る強盗数人を
逆にジャリジャリ引き摺って大通り近くまで戻る事が出来た。
「いったいどうした?」と、大通りの方から多くの野次馬達が集まって来た。
と同時に、砂利道を大通りと反対の方へ走って逃げ始めた強盗たち。
砂利道の途中にある店の裏戸から出てきたオヤジが、逃げる強盗の1人を
蹴飛ばす姿を見届けた次の瞬間、体から力が抜け、その場にしゃがみこみそうに
なり、自分の足もとを見ると、そこには砂利一面に広がる血だまり。

「え?誰の血? も、もしかして・・・。」

野次馬たちが心配そうに指さす自分の左腕を見てみると、
パックリと口を開けた二カ所の傷口からは、
ある程度出血した後だからなのか、すでに出血は収まりかけていて、
そのおかげで、見事に切断された皮下組織と筋肉、それに真っ白い腱までが
丸見え状態だった。
「え!? えぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
気が高ぶっているせいかほとんど痛みはないのだけれど、
ただでさえ『マレー限定虫アレルギー』なのに、
なんなのこの「剥き出し状態」は!?

中編につづく

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