お年寄りには優しく

沖縄・伊平屋島2011-6日目・前半-

お年寄りには優しく______。
小さい頃からそう教えられてきた。

肌を刺すような日差しが照りつける通称カズミビーチに、
自分たちの荷物の他、テント用具2式を担いで下ろしたのは、
もう2時間も前の事。真っ青な海を目の前にして、
いまだ先発隊の誰一人として海にも入れていないその理由は、
本日昼過ぎに合流してくる後発隊8名(70歳手前のオカマ2名を含む)の
日除けテントを建てる事が最優先だからなのだよ。
昨年、熱中症になった教訓を活かし、まずは自分たちのテントを建て、
その日陰の下で休んだり、作業中も十分な水分補給をしていたつもり
だけれど、やっぱり熱中症寸前の若手と呼ばれる中年先発隊。
そんな「お年寄りに優しい」ボクら先発隊の頑張りにより、
強い海風にも負けない立派なテントが建った。
パチパチパチ。隊員諸君! 今年もホントーーーにご苦労であった!!

まもなくして、山側の斜面から70歳手前のオカマを含む後発隊8名が、
ゾロゾロと下りてきて、挨拶もそぞろ、ボクら先発隊の頑張りを労うわけでも
礼を言うわけでもなく、それぞれの椅子にドカッと腰掛けて、ビールを
飲み始める者、釣りの仕掛けを作り始める者、泳ぐ準備をする者、
銘々が自分のペースでうごめき始める。
仕方ない。こちらはこちらで別に礼を求めているわけではないのだから。
あくまでも小さい時からの教え「お年寄りには優しく」を守っているだけなのだし。

ただ、「年寄り」の割に、隣のテントでグッタリしているボクら先発隊より
ずっと元気な上、やれテントの張りが甘いだの、やれ今朝のウンコは
堅かっただの、ピーチクパーチクと五月蠅いので、
彼らから少し離れた先発隊テントの下、熱中症寸前の体を休めながら、
小声で言う。
「黙れジジィども。埋めて帰るぞ。」

お年寄りには優しく。

後発隊の中で一番先に、自慢の水着姿を披露しながら、
内股で波打ち際にかけてゆく御年67歳の御仁の背中に声をかける。
「下着姿で泳ぐなオバサン。」
くれぐれもお年寄りには優しく____________。