オヂサンたちの魔方陣公園

新型コロナによる自粛の出口すらまだまだ見えない昨今。
音楽はもちろんの事、デザイン関係の仕事もほぼキャンセルとなり、無職のオヂサン状態となった父親の手の指先をギュッと握りしめて、自粛のせいでいつもより人通りの少ない通りをヨタヨタと歩く娘1歳6ヶ月。口と鼻を覆われた子供用マスクと帽子の間から此方を見上げて目を細めて笑う姿に、此方もマスクで隠された笑顔の分まで精一杯おどけて喜びを返す。

娘を預けている保育園の方から登園の自粛要請が出てから、日課となった昼食前の娘との散歩。
先月中旬からずっと在宅テレワークで、それでも仕事量が減るというわけでも無く、仕事用テーブルに磔にされた母親に手を振り、昼食の時間までボクと一緒に自宅の周辺を徘徊するわけだけれども、歩いてすぐの近所の公園はこれまた学校が休校となっている小学生たちがマスクを顎に引っ掛けた姿でワーワーキャーキャーと追いかけっこをしたり、遊具や砂場で遊ぶ幼児たちを見守る親たちがベンチでペチャクチャと井戸端会議をしたり、あららこれでは自粛の意味無いぢゃんとマスクの下の口をへの字にしたまま、遊びたそうに遊具を眺める娘に声をかける。「もう少し先まで探検しよっか」

暫く歩いた所にある別の公園は日当たりも悪く、普段から子供たちにも親にも人気がなく、ベンチでは背を丸めたサラリーマンやホームレス一歩前のオヂサンたちが、『公園内禁煙』と書かれた看板の悪い見本そのままの姿で、ビル陰が覆うその静けさの中に身を置いている。たぶん世間一般的な親はそういうのも気にするのだろうけれど、それを咎めたり出来るほどの生き方をしてきていないというか、むしろ咎められたり叱られたりする方だったので、まったく気にはならず、「ほれ、貸し切りぢゃ、此処で暫く遊べるぞ」と、何かに疲れ果てたオヂサンたちの作る魔方陣の中に、娘を放り出し、自分も空いたベンチに腰を掛け魔方陣の一角を担う。

オヂサンたちの魔方陣の中心で鳩を追いかけ回したり、耳が欠け塗装の剥げたウサギらしきセメント造形物によじ登ろうとする娘の無邪気さが、魔方陣のジメッとした重い空気を新品のカッターナイフのように切り裂いてゆく。暫くして、四方八方に切られた魔方陣の交差角の先端がそれぞれ地面に垂れ始める頃、まだまだ遊びたりなさそうな娘に近づきその手を握りながら「家までまた探検、探検」とマスク越しに声をかけると、娘も拙い口調で「タンテン、タンテン」とそれに従い、二人でオヂサン公園を後にして自宅まで。
途中、何度も抱っこを要求してくる娘を騙し騙し歩かせ、それでも交通量の多い通りは約10kgの身体を抱えて歩き、何度も「嗚呼、もっと自分が若ければ」と心の中で嘆きながら自宅へ帰り、自宅内の階段も抱っこなので、おかげで元来怠け者のボクの身体の二の腕と太腿だけは妙に鍛えられているというどうでもいいお話。

1日でも早く、この状況を理解すら出来ない幼児がマスクを思いのままに自分の顔から剥がせる日がやってきますように____。

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