最期の時

2011年12月15日。某大学病院の一室。
たぶん今日が、ボクと彼とが過ごす最期の時。

「とりあえず、これが第一目標。
 当たったら1割ちょーだいね。」と、
ボクが枕元に置いた『年末ジャンボたからくじ』に、
「当たって・・・他人に言う馬鹿・・・居ないよ・・・。」と、
人工呼吸器から漏らす息も絶え絶えながら、静かに笑う彼。

日毎にその量を増すモルヒネで混濁している意識の中、
虚ろな瞳をこちらに向け、
「向こうで・・・ケンカ・・・しちゃダメよ・・・。」と、
明日から旅に出るボクを最期まで気にかけながら、
再び眠ってしまった彼に小さく手を振る。

じゃあね、またゆっくりと。カウンターのこっちとそっちで___。