弓矢の"引き出し"のち"的外れ"

12月に完成させるはずのマキシシングルのレコーディングの本日は唄入れ。
栄養ドリンク2本を一気飲みし、軽いドーピング状態でさぁ唄入れぢゃ!!
ところが、本来唄うべき曲の表現方法に一抹の迷いを感じ、寸前になって、
アレンジャー兼ディレクターのN氏に「やっぱり別の曲やろ。」と言い出す
我が儘なボク。他の仕事で多忙なスケジュールを盾に、
「別の曲はまだ何にも手ぇつけてないぞ。」と言い返してくるN氏に対し、
「じゃあ待つし、今すぐ音作り初めてや。」と無理難題を言えるのも、
同郷で同じ高校の先輩後輩という間柄もあるのだけれど、
ビクターレコードでのデモテープ作りの席でアーティストとアレンジャーと
いう関係で彼と再会した20年前から、彼の音楽に対する世界観に絶対的
な信頼を寄せているからこそなのだよ。ちなみにhenssimoの1stマキシ・
シングルも彼にお願いしたのがもう11年前の話なわけで。

本当は彼はいつ倒れても不思議でないくらいに忙しい男であり、ボクなん
ぞが支払う金額で動かせる人でもないのだけれど、少しだけ歳の離れた
後輩のボクのそんな我が儘な言葉にも、
「よっしゃ。ちょっと待っちょれ。」と、心底優しい笑顔を返してくれる。

N氏が再びミキサーに向かい黙々とベーシックトラックを作る間、
彼の背後のボクはボクで、彼のギターを借りて本来今日録るはずだった
曲の表現方法らを整理したり、ポリポリと頭を掻いたり、あくびをしたり。

4時間後。
なんとかベーシックトラックが出来上がり、唄入れの為ブースに入り、
一通り唄った後、これまた厳しくも的確なN氏の指示に、じゃあもう1回と、
ボクはボクで心の引き出しを開けて、それでもダメならじゃあこっちの
引き出しという具合に、開けられる限りの引き出しを次から次へと開ける。
ボクのような不器用な人間にとって、それは毎回の事ながらしんどい事
なれど、開けた引き出しに「正解」が入っていた時の「矢で的の真ん中を
射止めた感」はこれまた格別なわけで。
ただ、若い頃のように無尽蔵に体力があるわけでもないので、なるべく
早い段階で彼の指示する、または自分の思い描くその的を射貫かなけ
ればならず、そこはダラダラとながら長年やってきた経験と感で
「ここぢゃっ!エイヤッ!」とだね。

そんなわけで唄入れを開始して約3時間後には、逆に自分の方から彼に、
「そこの"ウッフン"はもっと可愛らしくしたいのよ。もう1回録らせて。」と、
ボーカルブースの中でいろんな「ウッフン♪」を披露する、端から見れば
なんとも馬鹿馬鹿しい事に真剣に取り組んだ甲斐もあって、
henssimoでもお馴染みの、そう『Oh!カマSummer!』ここに唄入れ完了。

帰宅後になって、夕方前に飲んだ栄養ドリンク2本が効いたのか、
無用な所で意味も無く元気になってしまうソレに慰めの言葉をかける。
今更、しかもオマエに効いてもそれは的外れぢゃ_________。