缶詰の蓋を開けながら-伊平屋9日目中盤-

明日、10年に1度開催されるという宿のお父さん方の「一門」の会の為、この日のフェリー便で大挙して押し寄せた親戚の中には、宿の家族たちすらほとんど話した事も無い、名前も顔も知らない血縁者も多数いて、完全に親に半ば強引に連れてこられたのか、すぐ傍に広がる真っ青な海を見る事もなく、嫌々来てますと顔に書いたかのような若者もチラホラ。

本来なら、そんな若者にこそ、この伊平屋島の良さを知って貰うべく、島ならではの体験をさせてあげたいのだけれど、いかんせん、自分は腹を空かせたキミたちの為に、こーして大量のマグロ煮缶詰をキコキコ開ける作業を任されており、これが終わり次第、公民館にテーブルと椅子を、中庭にバーベキュー用のテーブルをそれぞれ人数分並べなければならん。ああ、さっきからスマホの画面ばかり睨みつけているだけのキミたちのために。

キミらに比べ1%もここの家系のDNAを有さない、又は婚姻関係にも無い赤の他人の自分が何故ここまでしているのか、キミたちが理解出来るように説明するのは、この上なく面倒臭いのでしないけれども、つまりは家族同然という事は他人であるという事で、愛を持って接すれば逆もまた真なりといふ事さ____。