尊敬と畏怖

新宿2丁目に出かける前に、ちょっとした用事の確認を
済ませておこうと、ワイルドミュージックスクールに
電話を入れたのだけれど、光太郎さんはレッスン中で、
なら詠子さんに伝言だけでもと思い、詠子さんを呼び
出して貰った。

暫く保留音が流れた後、男性の声で「はいよ〜。」
____アレ?光太郎さん、たまたま 手が空いてたのか。
と、思って、いつもの横柄な口調で
「ウィ〜ッ、お疲れ〜っ♪あのさ….。」まで言って、
相手の反応がいつもの光太郎さんではないと気づき、
恐る恐る聞いてみる。
「あ、あのぉ〜。ひょ、ひょっとして、☆ひろさん?」
「そだよ。」

上下関係に厳しいこの世界。あーこれで、自分の音楽人生も
幕を閉じたのだな〜、と、西を目指してひた走る引っ越しトラックの
助手席で黄昏れる自分の姿と、名曲「昭和枯れススキ」が流れる脳内。

当の☆ひろさんは、太平洋のように大きな心の持ち主なので、
自分の非礼など意に介さない様子で、「で、何よ?」と、
メリージェーンの声で聞いてきてくれるのだけれど、
こっちは軽いパニック状態。
結局、先日の食事のお礼も、気づかなかったとはいえタメ口を叩いて
しまったお詫びも、そして肝心の用事の内容も上手く言えないまま、
「と、とりあえず、明日伺いますっ! 明日!」と、電話口で敬礼の
ポーズを取った後、まさに逃げ出すように電話を切った。

プロレスのリング。対戦し馴れた相手が向こう正面から
登場するものと信じ込み、「早く出てこいやーっ!!ウラァーッ!!」と
意気込んでいたら、実際に現れたのが
『伝説のチャンピオン』だった時の、若手プロレスラーの気持ち。

13日の金曜日は何があるか解らない(泣)。