食物連鎖、その実際

1.
桟橋の周りを泳ぐ黒い絨毯を敷き詰めたかのような
小魚の群れ目掛けて、まずは静かに「引っ掛け用」の針を
投げ入れ、タイミングを見て素早く竿を引く。

2.
針に引っ掛かった小イワシのような小魚を別の針に付け替え、
それをエサに、中型魚を狙う。

3.
うまい具合に中型魚が釣れたら、
今度はその中型魚をエサとして大きめの針に付け替え、
海に投げ入れ、大型魚が針にかかるのを待つ。
そして大型魚が釣れたら、村のレストランに持って行き、
調理してもらって喰う。

4.
そしてそれらはやがてボクの体内から出て、プランクトンに
分解され、そのプランクトンを小魚達が喰い、
1に戻り、その小魚達の群れ目掛けて再び・・・。
これぞ素晴らしき食物連鎖!!

だが実際は口で言うほど上手くゆくはずもなく、
小魚がなかなか針に引っ掛からず、たった一匹引っ掛けるのに
1,2時間も要したり、やっとの思いで引っ掛けた小魚を別の針に
付け替え海に投げ入れた瞬間に、「海のギャング」と
地元の釣り師達から忌み嫌われている『ダツ』が、一瞬で小魚を
針ごとかっさらっていったり、『エサ取り』と呼ばれる熱帯魚たちに、
細かく細かく食い千切られて、終いには魚たちにエサとして認識して
もらえない状態で、プカリプカリと波間を浮遊し続ける『元・小魚』の
姿は儚い事この上なかったり。

「あーぁ、また小魚を引っ掛けるトコからかぁ。」と、
目の前の真っ青な海を恨めしく眺める。
そんな繰り返しだけれど、それでも釣りは楽しいのだよ。