ヤブ医者めっ!!

午後4時前、クアラ・トレンガヌの長距離バスターミナル(以下BT)で
バスを降り、宿探しをする。チェラティン村同様、この町も11年振りで、
その変わりように驚きながら町を歩く。チェラティン村で降っていた雨も
ここまでは追いかけて来なかったようで、空は晴れていて蒸し暑い。
一刻も早く宿を決めて今日中に病院に行きたかったので、
ガイドブックに掲載されていた目当ての宿よりも、
はるかにBTに近い『ALAMANDA HOTEL』(1泊60RM=約1800円)
チェックインした。

エアコンの効きが悪いけれど、それは後からスタッフにでも言えばいい。
部屋に荷物を下ろして、少しだけ休憩をした後、
「病院よりクリニックの方が良いって。
 もうじき斜向かいのクリニックが再開するはずだから。」
というスタッフの忠告を聞き流し、病院に行く為にホテルを出た。
市街地から病院までは片道2kmと、徒歩で歩くには少々嫌気がさす距離なので、
先程のBTまで徒歩で戻り、ターミナルの前で客待ちをしているタクシーに
乗って病院へ。タクシー代8RM(約240円)。足もとを見られたカタチで少々高め。

自分が思っていたよりはるかに大きな病院の敷地内。
そこの救急外来用の受付前でタクシーを降り、
メルシンの病院でしたのと同じような手続きを済ませ、
薬代込みの診察料を支払うのだけれど、
メルシンの病院と違うのはその料金。
マレーシア人は1RM(約30円)なのに対して、外国人は50RM(約1500円)
メルシンは一律15RM(約450円)だったのに、州が違うとこうも違うのか。
日本に居る感覚なら安いのかもしれないけれど、いかんせん今は予算の
決められた一人旅。安ホテル1泊分に相当するこの金額は正直痛い。
50RM札をしぶしぶ支払い、番号札を受け取り、待合室で順番を待ち、
自分の番号が表示された診察室に入り医師の診察を受けた。
その際、メルシンの病院で貰った薬を医師に見せながら、
「この薬が効かない。自分としてはもっと効き目の強い薬が欲しい。」
と説明をしたにもかかわらず、診察終了後、薬局で受け取った薬は
抗ヒスタミン剤数錠とマルチビタミン数錠、それとカーマインローション。
どれも既に自分が持っている物ばかり。
こっは、タクシー代と合わせ60RM(約1800円)も余計な出費をしている。
その結果がこれでは、なんだか腹が立つ。
すぐに診療室に戻り、既に別の患者を診ていた医師にクレームを入れるも、

「ここは外来だから、とりあえずそれしか出来ないわよ!!
 ちゃんとした薬が欲しければクリニックにでも行きなさい!!」
と、愛想の悪い女医師に逆切れ気味に開き直られる。

「持っている薬が効かないからわざわざ此処に来たんだろ!!
 ちゃんと理解しろっ!!このヤブ医者!!」
なんて事を言えるほどの語学力はさすがに持ち合わせて無く、
結局は舌打ちをひとつ、捨て台詞代わりに残して診療室を出た。

「あー悔しい。あー悔しいったらありゃしない。」
片道2km。流しのタクシーの通らないその道を歩いてホテルまで帰って来た。
 
 
ホテルに戻り、ホテルのスタッフに病院でのいきさつを説明すると、
「ホラごらんなさい。とんだ出費だったわね。もうじき斜向かいの
 クリニックが再開するから、そっちへ行ってみなさい。」
と、再度促された。ボクは「今度は素直にそうする。」と、
何度も頷きながらエレベーターに乗り込んだ。

エアコンの効かない部屋で少し寝た後、部屋を出て、
ホテルの裏手に位置するマレー食堂で遅い夕食を摂る。
ピンク色のサフランで炊かれたご飯と鶏肉カレー(3.5RM=約105円)
それとコピ・オー・アイス(ミルク無し砂糖入りアイスコーヒー1RM=約30円)
 

食後、ホテル斜向かいのクリニックへ行き、受付兼看護師の女の子に
パンパンに腫れあがった左手首の水泡を見せて病状を説明する。

「医師の診察を受ける?」と聞いてくるその子に、
「いや、とりあえず今持っている抗生物質より
 効く薬が欲しいだけだから。」と答えるボク。
間もなくして、彼女が薬品棚から取り出してきた2種類の薬のうち、
「やっぱり値段の高い方が聞くの?ホントに?ホントに?」と、
道化混じりで訪ねるボクを見て、他の看護師たちもクスクス笑う。

結局は彼女を信じて値段の高い方の抗生物質(60RM=約1800円)
購入したのだけれど、ボクの財布からは再び50RM札と10RM札、
それぞれ一枚ずつが消えてゆき、今日一日だけで100RM(約3000円)余りもの
余計な出費に、思わず泣き出しそうになってしまうのだよ。

夜中、左手首の水疱の痒みで何度も目を覚ます
11年振りのクアラ・トレンガヌ初夜_____。