溶け込めないその街角で

所用で銀座の高知県アンテナショップ『まるごと高知』に行き、明らかに場違いな雰囲気の中で孤立する自分を担当の方の優しい笑顔が救ってくれたにはくれたのだけれど、所詮新宿のチンピラ風情に銀座は似つかわしくないらしく、其処で買ったお土産のミレービスケットを提げて銀座を足早に退散。御大つのだ☆ひろ氏宅へ向かう途中、秋葉原に立ち寄る。

昔は電気問屋街だったこの街も最近ではアニメとフィギアとコスプレで埋め尽くされ、道行く人々から漏れ聞こえる会話のその口先だけで喋る独特のリズムの軽さに反比例するマニアックな内容のせいか、多少柄は悪いけれど至って普通に歩いている素人な自分の方が変なんじゃないかと思ってしまうほど。とはいっても自分の目当ての店も興味の無い人からすれば十分マニアックな店なのだけれど。

目当ての店に入り、各階のフロアに並んだショーケースの中身やビニール袋に包まれた商品を、「へー、こんなのあるんだー、欲しいなー。」などと思いながら、庭園の花々を見るような歩みで見てゆく自分の周りを、映画やドラマから出てきたかのような格好の所謂『オタク』と呼ばれる人たちが行き交うのだけれど、陳列棚の間の通路が狭いので、時折、客同士が鉢合わせになったりする事も多く、自分の場合は大抵相手に道を譲る。会釈も無しで通り過ぎる相手に、この街はそれがルールなのだと思えばそれほど腹も立たない。逆に、商品を眺めている他の客の前を、手で前を切り軽く会釈をしながら通るオッサンな自分の方が完全にマイノリティなのである。

仏像フィギアを1体1体吟味している女の子。競歩ランナーかと思えるようなスピードでこちらに歩いてきたかと思うと、エレベーターのドアに何度も体を挟まれ、それでも動じない振りを一生懸命作る猫背の男の子。こうして見れば、自分は買い物目当てではなく、人間観察の為に行ったような気もしないではないけれど、それでも素人は素人なりにしっかり買い物を済ませ、夕暮れは溶けてゆくのに、自分は溶け込めないその街を後にした10月最後の日___。

_____次につづく。